令和5年4月号 ウィズコロナ アフターコロナ

 新型コロナが発生してから3年有余となりました。当初は実態が不明で,社会全体がパニックになりさまざまなことが言われ,流言や関連した事件も発生しました。ある程度の対応が確定して世の中が落ち着いてくると会合やイベント,旅行が盛んになってきました。しかし,統計によればなんらかのイベントの後には感染の流行が再燃しています。

 このたび,国ではコロナ分類を2類相当から5類に移行する決定をしました。社会や経済の活性化のためにはやむを得ないとの判断です。一 時期に比べれば発生数は格段に減少していますが,我々医療人は慎重にならざるを得ません。科学的根拠に基づいた決定であってほしいものです。有効な治療薬の少ない現状では,一般疾患とコロナを同一に取り扱うのはさまざまな問題があります。今まで,医療界で懸命に取組んできた成果を無にはして欲しくないものです。感染力の強い感染症は一般医療とは分離する必要があります。日医には明確な意見を述べていただきたいものです。

 私が年少のころ(1940年代~50年代),冬になれば,学校でも家庭でもマスクとうがい手洗いを厳しく言われました。これは花粉症や季節性インフルエンザ予防の目的の他に,猛威を振るったスペイン風邪を経験した人々が多くいたことと,当時は敗戦直後で満足な薬も少なく一般的な風邪でも拗らせて重篤になることを恐れての手軽な予防法でもあったのでしょう。コロナにより再びマスク装着が当然の世の中になりました。今後,マスク装着は個人の裁量に委ねられても医療機関や介護施設では装着して欲しいものです。

 5月より5類に移行されますが,流行の初期や最中はともかく長期化ともなれば飽きるし,経済や日常生活を通常に戻したいとの要望が出るのは当然です。しかし,我々医療関係者は,そのようなときにこそ率先して感染に対する警鐘を鳴らさなければなりません。ウィズコロナの言葉どおりにコロナとの共存が可能かは別にしても社会を円滑に回すためにはなんとか折り合いをつける必要があるのは理解できます。そのためには全国民が感染に対して正しく認識し,行動することが前提です。

 一日も早くアフターコロナの状態になってほしいものです。しかし,将来も感染症流行は覚悟すべきで,人類の歴史は一面感染症との闘いの繰り返しです。各個人が正しく対応するのが重要で,アフターコロナでもそのような教育,啓蒙を緩めてはなりません。

令和5年4月号