令和5年5月号 全国学校保健・学校医大会
昨年11月,全国学校保健・学校医大会が紅葉の見事な盛岡市で開催され,次回の開催担当県が兵庫県に決定しました。次々回(令和6年度)は宮崎県の担当となります。県医では早速,小児科医会,内科医会,耳鼻咽喉科医会,眼科医会などに協力を依頼して実行委員会を発足し,小牧副会長,髙木常任理事を中心に事前準備に入っています。今後,メインテーマや講演・講師並びにアトラクションなどを決定し,本年10月に神戸市で開催される大会で「宮崎大会」の概略を発表します。会場や宿泊の確保,アクセスの案内なども必要となってまいります。また今年度は九州ブロックの学校保健・学校医大会が宮崎県担当の予定でしたが,熊本県に交代を願い令和6年の全国大会と九州大会との同時開催といたしました。
日医でも学校保健,学校医の活動を重視しています。1月の都道府県医師会長会議のテーマに取り上げられ,学校現場におけるさまざまな問題が協議されました。
いくつかを挙げますと,まず,学校健診時の脱衣の問題があります。しかし着衣での健診は可能でしょうか? 子どもたちの気持ちへの配慮は重要でも健診時の着衣は過剰反応の感があります。定かではありませんが,古くは貴人に「糸脈」なるものがなされたそうです。これは直接手を触れるのは不敬であり,手首に巻いた糸を伝ってくる情報?を得ようとしたものらしく,糸電話ではあるまいし,まさに隔靴掻痒の極みで,とても診断ができたとは信じられません。同様に着衣のままでは疾患の見落としが懸念され,訴訟などにつながる可能性も否定できません。
若い学校医のなり手が少ないのも深刻な問題です。地域によっては学校医の確保が困難と言われています。特に耳鼻咽喉科,眼科の絶対数が少なく多数校を重複して担われている先生もいるようです。しかも現在活躍中の学校医も高齢化が進んでおり,数年後には更に切実な問題になると予想されます。また学校医活動に加えて,更に業務に見合わない報酬設定で産業医の役割を担わせている例もあり,学校医にとって過重負担になっています。自院の診療時間を割いて献身的に学校健診を行いながら学校職員の健康管理まで行うことは大変なことです。
子どもたちの健やかな成長をサポートする学校医の存在はますます重要となってまいります。前述した科のみではなく,婦人科,精神科,整形外科等々多くの科に参加していただくべきですが,要望を行っても予算の関係もありなかなか実現しません。
その他,学校での健康教育の実施,学校医の待遇(業務に見合わない報酬),健診データの活用や健診実施者の責任,コロナの影響等々多くの問題が挙げられました。
従来の学校保健,学校医の在り方が現状とかけ離れている面もあるようです。子どもたちの健康重視の面から少子化対策の一環としても根本的に見直す時期にきているのかも知れません。「宮崎大会」ではこれらの問題をより掘り下げて検討したいと考えております。
令和5年5月号