平成29年07月号 医師の働き方について

 過剰労働による様々なひずみが社会問題として取り上げられるようになりました。過労死、過労による疾病等々、連日ニュースとなっています。問題を重視して国は新たな法的規制を掛けようとしています。それらを踏まえて、医療界にも労働時間見直しの動きが出てきています。確かに、医師の労働時間・拘束時間は社会通念からすると常軌を逸しています。他の職業に比べて医師の寿命は短い、特に産科医師は短命であると言われてきました。以前から何らかの対策が必要であると問題提起されていましたが、刻々と容体が変化する患者さんを目の前にして医師が現場から離れることはできませんし、加えて医師には応召義務が課せられています。医師は簡単に現場から離れられない仕組みになっており、なかなか労働時間の改善がなされないままで過ごされてきました。
 もし、法的規制がされ時間内のみの診療になれば、地域医療は直ちに崩壊してしまうでしょう。言い換えれば我が国の地域医療は、医師の奉仕精神で支えられている部分があまりにも多いとも言えます。現場の状況を斟酌せずに一方的な面からの規制を設けることは根本的な解決にはなりませんし、混乱を惹起するのみです。とは言っても何もしない訳には済まない状況になっています。日医でもこの問題を重視して、勤務医の過重労働問題について検討を行い、勤務医の健康を守るためのリーフレット作成や医療機関への提言などを行ってきました。更に今年の5月、地域医療に混乱を生じさせることなく、質の高い医療提供体制の維持と医師自身の健康確保を両立するような制度を検討することを目的として、「医師の働き方検討委員会」を設置しています。健康や社会的な観点からも、一般労働者の待遇改善と同様に医師の主として労働時間の待遇改善も待ち望まれるところです。
 但し、これらは主として勤務医についての労働条件改善ですが、勤務医だけでなく昼夜分かたず診療している開業医の先生方も多くおられます。ボランティア精神で支えられている地域医療までも法律で規制できるのでしょうか。応召義務との整合性は如何なるのでしょうか?もし、開業医まで含めた医療全般に規制を設けるとしたら、地域医療の維持は医師、看護師が今の倍数いても難しいことになり、全国で時間的な無医地区が多発することになります。
 その他、医師には常にスキルアップのための研鑽が必要です。スキルアップのための学会参加や研究・学習も就業の一部ととらえれば、如何なることになるのでしょうか。現時点では医師の就業時間を一般業と同じように一律に制限するのは不可能であり、地域医療に混乱を来さないような緩やかな解決策が望まれます。そのためには、医療に対する国民の意識改革も必要となるでしょう。国や日医の対応を注意深く見守りたいと思います。

(平成29年6月22日)