平成29年11月号 レセプト審査改革とIT

 全ての公共機関や機構で進められているように支払基金でも機構改革が論じられています。審査の地域差をなくし事業の効率化を図り経費を削減するというもので、その主旨は間違ってはいません。例えば西高東低などと言われている地域差については、それぞれ事情があっても皆保険制度下では全国均一の医療が当然であり偏差をなくすためにIT審査にし、更に各県で行われている審査業務をブロックで統一しようとするものです。いつの時代でもチェック機構は必要ですが、現在の審査業務が無駄とは言い切れません。疾病は患者さん毎に事情が異なっているのに画一的なチェックが可能でしょうか?しかも人間の行為を機械がチェックするのは馴染み難い感じがします。自分が歳を経たので急激な変化には違和感を覚えるのかもしれません。
 将来は、診断から治療まで医療の全てを人工知能任せの時代がくるかもしれませんし、効率のみを考えればそれも一つの選択肢になるでしょう。現在でも医療現場ではほとんどの分野に何らかのITが導入されていますし、レセプト審査も例外ではありません。ITがなければ円滑な業務遂行が不可能な状態です。審査改革では、更に進めて90%のレセプトチェックをITに任せて、ごく一部の審査のみを医療関係者が行う方針です。医療関係者とは医師に限られていません。医療に精通した者となっており、韓国では看護師等が審査している例もあるようです。当然ながら社会保険のみではなく国民健康保険も同様にあるべきで、その他の保険(医療補助や労災・自賠責)も同様な見直しがなされるかもしれません。更に財政を基に検討すれば社会福祉全体の見直しが必要になり、極論を言えば行政・財政のほとんどがIT管理になるかもしれません。
 現代の医師は200万以上の事象を記憶する必要があるとされています。医学・医療の現場では遥かに多くの情報が溢れています。例えば医学論文は年間数十万件発表されており20年毎に倍増しているそうです。過去の知識に加えて常に新しい情報を吸収する必要があります。それらを整理し必要な情報を得るには、ITの補助は不可欠です。前述した如く画像処理や限定的ながらも診断・治療決定には既にITが導入されています。レセプト審査業務に於いても膨大な情報を効率良く処理するにはITの補助が必要です。改革に反対するつもりもありませんし、先に述べましたように地域差をなくし公的保険の公平性を期し効率化を求めるには画一的な基準が必要であることも理解はできます。
 しかし、医療は人・患者さんが対象です。血の通った暖かい医療を目指すべき医師の立場からは、審査も血の通ったものが望ましく、IT主体の審査は冷たさが強調されるような気がしてなりません。経済的理由を基にした改革からは矛盾するようですが、人間らしさ、ある意味での匙加減・ファジィな部分があっても良いような気もしますが、諸氏のお考えは如何でしょうか。

(平成29年10月21日)

平成29年11月号