平成29年12月号 医療類似行為と療養費

 このテーマは古くて新しい問題です。様々な場面で主として整形外科から問題提起がなされています。歴史的に、医師が不足しており代替医療(医療類似行為)として骨折等を柔道整復師(柔整師)がカバーしていた時代がありました。その後、業界団体からの要望で医療と同様に診療報酬から支払われる受領委任払い制度が発足しました。柔整師等は比較的容易に資格が取れ開業できるので、今や養成施設が増え毎年7,000名超卒業しています。比べて整形外科は毎年500名程度誕生し、自然減もあるので実質はもっと少なくなります。医療・医療類似行為は公共的な面が強いので、養成も計画的になされるべきにも拘らず国は新設を認可してきました。供給が増えれば需要も増えて財政負担が増加するのは当然です。このような事態は予測できなかったのでしょうか?今や 柔整師療養費は4,000億円で小児科や皮膚科の外来医療費よりも高くなっています。近年、「あはき」(あん摩・針・灸の略語)療養費も医療の往診にあたる「往療費」を中心にして増加傾向にあり1,000億円に近づいています。従事者増に連れ不心得者も一定の割合で増えて、反社会的な組織と組んで架空請求等のニュースがあったのは記憶に新しいところです。
 これは制度自体の問題と療養費の問題があり、密接にリンクしています。柔整師は数年の養成期間を経て資格取得後直ちに開業できます。医師は大学6年間+臨床研修2年間の後に開業は可ですが、更に専門医教育が必要となります。健保上は両者同様の取り扱いとされます。そこで柔整師に3年間の研修期間を設ける案が浮上してきました。それでも同一俎上に挙げるのは如何なものでしょうか。更に柔整師の過剰広告問題もあります。医師は広告が禁止されていますように柔道整復師法でも、「腰痛・神経痛・肩凝りに効く」「〇〇式除痛法」「交通事故取扱」等は違反広告となりますが、氾濫しています。
 療養費受領委任払い制度(これが諸悪の根源という人もいる)の問題点としては、利用者から白紙委任状を取っての施術者による代理請求、骨折・打撲・捻挫等の限定された急性疾患以外にも慢性疾患に対しての多数回多数か所の長期間施術、医師の同意書の不適正取得問題、レセのチェックや指導監査の不徹底等々があります。問題の多い受領委任払い制度ですが、「あはき」についても一部疾患を受領委任払いとする要望が強くなり、厚労省委員会で検討されました。臨床整形外科医会では、現在の柔整師に於いても不正が後を絶たない段階で、改善策も不充分なまま認可するのは反対であるとの意見ですが、国は、「あはき」にもチェック機能を付加する条件付きで認可する方針のようです。
 勿論、大多数の業者は法に則っており、一部の者のために迷惑を被っているものと思われます。問題があっても制度を過去に戻すのは、関係者やこの制度の恩恵にあずかっている人々も多く社会的影響を考えれば、困難です。制度を戻すのが困難である以上、コンプライアンス徹底・ルール厳守で実施することが求められます。

(平成29年11月24日)
平成29年12月号