平成30年02月号 医師の養成・教育

 ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、アドミッション・ポリシー、諸氏(特に年配の先生方)はこれらの言葉を聞かれたことがありますか?これらは現代の大学教育現場で使用されているもので、卒業認定・学位授与に関する方針、教育課程の編成・実施の方針、入学者受入方針のことです。私たち古い時代に教育を受けた人間には、聞きなれない言葉です。今日の大学では自主的に明確な教育方針を設定し、その成果を多くの因子で評価しています。入学、教育、研究、就職、大学経営まであらゆる分野で大学の機能が評価され、更にこれらのデータは公表されて学生が志望大学を決定する根拠にもなります。
 昔から多くの賢人達が医学教育の理念や重要性を述べています。時代を経ても医学部教育に対する基本的な考え方や目的や期待は変わらないと思われます。教育は古くより知育、徳育、体育と言われており、医学部教育においてもこの3要素は該当すると思われます。
 現代の医学部教育(知育)は懇切丁寧を極めています。時代の要請でもありましょう。現代の医師は200万以上の事柄を覚えなければならないとされています。覚える量も膨大にあり、覚えたものを整理して取り出すのも困難で、忘却もあります。それを補うために様々なガイドライン等が作られていますが、それでも齟齬は発生します。社会に役立つ良い医師を育てるのに、国が明確な基準を設定し一定の枠内で一定の基準の元に育成すれば、ある程度以上の均一化された成果は上がるでしょうが、独自性とか個性を伸ばす教育とは相反することになりはしないでしょうか。
 古くは大学の自治が称賛され聖域と見做され、医師は特権的な職業と見られた時代もありました。そのような中で不祥事が頻発する事態の反省で倫理やコンプライアンス厳守教育(徳育)が盛んに言われるようになりました。新専門医の過程でも医の倫理が重要視されています。私達はヒポクラテスの精神として習った記憶があります。
 第一線の医師は気力・体力(体育)がなければ厳しい時代に対応できません。医師として活躍できる健康寿命を延ばすためにも学生時代にできるだけ心身を鍛えておくことも必要です。
「大学生ともあろうものがそこまで細かく関与されるのは如何なものか」と、先輩方からは一喝を食らうかもしれません。しかしこれも時代の趨勢であると思われます。
 さらに県民の期待に応える良い医師を育てるためには、大学での教育は当然ですが、県民全体で医師を育てるという意気込みも重要です。医師としての力が十分に発揮できるよう快適に働ける職場の確保、働きやすい勤務環境作りが望まれます。

平成30年2月号