おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

 平成16年12月18日放送
アルコールと心臓病
 
          宮崎県内科医会 近藤 裕行

アルコールの短時間での心臓への悪影響としては、まず心拍数増加に伴う心仕事量増加や拡張期短縮による心拍出量低下や冠血流量減少のために、患者さんによっては心不全や狭心症を誘発する危険性があります。飲酒した日の深夜や早朝に冠攣縮性狭心症発作が起きる患者さんもいます。他に発作性心房細動や心室性不整脈の誘発も言われています。ただし適量ならばストレス解消による好影響も考えられます。

 多量長期飲酒の悪影響としてはアルコール性心筋症があげられます。長期間多量(日本酒で約5合、10年間連日飲酒)の飲酒を継続すると拡張型心筋症と同じような心機能不全をきたすことがあると言われています、。また、高血圧は虚血性心臓病の危険因子のひとつですが、多量飲酒者は、非飲酒者より血圧が上昇しており、3合以上飲酒者は非飲酒者の3〜4倍高血圧者が多いといわれています。適量ならばアルコールは善玉(HDL)コレステロールが増加して、動脈硬化改善、虚血性心臓病減少、高血圧改善等をきたすという好影響も及ぼします。これは、高脂肪食を摂っているにも関わらず、心筋梗塞や虚血性心疾患での死亡率がフランスでは英国の3分の1、ドイツの半分以下であるというフレンチパラドックスが有名です。日本でも適量飲酒により虚血性心臓病の発症危険度は低下することがわかっています。しかし逆に脳卒中はわずかですが増加するとされ、虚血性心臓病と比べて脳卒中の発症率が高い日本では、両者を合計した循環器疾患死亡の絶対リスクは不変であるといわれています。多量飲酒者は癌や事故や事故での死亡率が一気に上昇するということもあり、飲酒は好影響もありますが、あくまで適量にとどめておくべきと思われます。