おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

  平成17年1月8日放送

肝細胞がんについて

宮崎県外科医会 東 秀史

 肝細胞がん(HCCと略す)は、男子の悪性腫瘍による死亡原因の第3位を占めており、日本ではきわめて一般的な腫瘍です。B型あるいはC型肝炎ウイルスが感染すると、ウイルスの遺伝子は正常の肝細胞の遺伝子に組み込まれ、やがて正常の細胞をがん細胞に変えてしまいます。HCCに特有の症状はありません。進行したものでは、肝臓内外への転移、腫瘍による門脈閉塞、腫瘍の破裂と出血などの多彩な像を呈します。

 診断は、血液検査と画像診断の組み合わせでおこなわれます。HCCの細胞が産生する物質(HCCに特異的な腫瘍マーカーとよばれます。通常はAFPPIVKA-IIの2種類)の血中濃度を測ることは重要な検査です。腫瘍マーカーのレベルが上昇していれば、精密画像診断をおこなう必要があります。画像診断としては、まず超音波検査をおこないますが、これに引き続いて必ずCT検査をおこないます。ほとんどのHCCCT検査のみで診断できます。というのは、CT検査の際の造影剤によるHCCの染まり方が、他の腫瘍と明確に異なっているからです。MRIや血管造影検査は必須の検査ではありません。

 治療は、腫瘍のサイズや個数をもとに種々の治療法(手術・ラジオ波焼灼療法・肝動脈塞栓術)を組み合わせておこないます。小さな腫瘍が3個以下であればラジオ波焼灼療法、腫瘍が肝全体に多数みられる場合は肝動脈塞栓術が選択されます。直径が3cm以上の大きな腫瘍や、肝臓の働きが良好に保たれている場合には外科手術をおこないます。最近の肝切除術はきわめて安全におこなわれますので、恐れることはありません。病気の進行の程度によっては、これらの治療法をすべて駆使することで良好な結果が得られています。