おしえて!ドクター健康耳寄り相談室第55回

　おしえて！ドクター健康耳寄り相談室
　平成１７年３月１２日放送

発達障害のこども

　

　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　宮崎県精神科医会　　赤松　馨

軽度発達障害という言葉によく出会うようになりました。「軽度」の意味がよく理解されず誤解を招きやすいと指摘があり、最近は発達障害と表現することが多くなってきています。個性的、落ち着がない、一人遊びが好き、意外なことに物知りというような子供さんに、発達障害という診断がつくことがあります。自閉症、アスペルガー症候群、学習障害（LD）、注意欠陥多動性障害（AD/HD）等と細かく診断されますが、これらの総称として発達障害と言う言葉が使用されています。発達障害は全人口の６％とも言われており、アスペルガー症候群に代表される広汎性発達障害がその大部分を占めています。

広汎性発達障害は、①素直で悪気がない・暗黙のルールが解らない・同年齢の子供と波長が合わないなど他人と社会的関係を持ちにくいこと、②回りくどい・細かいところにこだわる・言葉の使い分けが下手などコミュニケーションをとりにくい、③ごっこ遊び・ふり遊びが少ない・機械的暗記が得意など想像力と創造性の問題で特徴づけられます。周辺症状として、感覚過敏や学習面の問題、多動や衝動性の問題を抱えていることも多く診断が混乱しやすいようです。LDやAD/HDも少なからず広汎性発達障害の特徴を兼ね備えており自閉症スペクトラムや自閉症ファミリーと呼ばれたりします。

発達障害は先天性の脳機能障害と言われていますが原因は解っていません。外見では判断しにくいため障害に気づかれず、「気にしすぎ」とか「躾の問題」とか「やる気がない、反抗的」等と誤解されたりします。完治するというものではありませんが、幼少からの療育で社会適応は向上し才能も発揮できるようになります。そのためには可能な限り早期に正確な診断を行い、2次的問題を予防しつつトレーニングや支援につなげることが大切と言えます。発達障害の正しい知識と共通理解及び統一した関わりのもと、安全で穏やかな環境を提供しいじめから守る、明確なルールや指示に心がける、ポジティブにゆったりと接するなどの工夫が求められます。成長に伴い学校生活や地域生活、就労と生涯を通してのサポートも考える必要があります。4月から発達障害者支援法が施行されますが、これを機に一人でも多くの方が発達障害に関心を持って頂ければと思っております。