おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

 平成17年3月26日放送
医療機関における個人情報保護法
 
          
            宮崎県医師会  富田 雄二

 平成17年4月1日から個人情報保護法が施行されます。この法案の主旨は、

個人情報の保護と利活用という相反する問題を両立させるルール作りの為に定められたものです。その内容を簡略化すると以下の4点を求めています。

1.個人情報を収集する際には、何に使うのかという利用目的を特定し、それを本人にわかりやすく説明し、不正のない方法で収集しなくてはならない

2.収集した情報は安全に保管しなければならない

3.情報の主体者である本人には、自分の情報がどのように集められ、利用されているのか、その内容が正確であるかを自ら確認する機会が与えられていなければならない、つまり情報開示の必要性

4.本人が自分の情報を見て、もし内容に間違いがあれば訂正を求めることができるし、また本人が望まない方法で利用されている場合にはそれをやめさせるよう要求できる

 では、具体的に医療の現場で何が変わるのでしょうか。

 まず、目的をわかりやすく説明することについて。医療機関における個人情報収集の目的は、当然ながら病気の診断や治療に役立てる為ですが、一人ひとりの患者さんに個別に目的を説明するのではなく、院内にポスターなどの形式で表示をすることになります。医療機関を受診した際にはそれをご覧下さい。その内容に納得がいかない場合には遠慮なく窓口でご相談下さい。申し出がない場合は、了解を得られたものとなります。

 次に情報を安全に管理することについて。医療関係者は、従来から「守秘義務」があり、患者さんの情報を守ることを義務づけられています。しかしながら、これを機に再度情報管理を徹底するようにしています。最近は情報をコンピュータなどで管理することも多いですから、それにも対応するようにしています。このことに関連して、第3者への情報提供の問題があります。具体的には、患者さんが他の病気にかかったり、精密検査が必要となって、他の医療機関を受診することがありますが、その場合、他院の医師へ病気や治療の内容の詳細を知らせます。また、ご家族へ病状説明をすることもありますが、これらは第3者への情報提供になります。これらについても通常の場合は、個々に了解を求めるのではなく、ポスターに情報提供範囲を掲示しますので、不明の点があればご質問下さい。ただ、特別な情報(悪性の病気とか)の場合は、改めてご本人の了解を取ることになります。ただ、自分は聞きたくないという方もいらっしゃると思いますので、現場での混乱も心配されます。そのような方はあらかじめ説明を聞く家族を主治医に指定しておくと良いと思います。

 情報の開示については、すでに日本医師会で「診療情報の提供に関する指針」を作っており、その中に詳しく定めています。これは、患者さんと医師の信頼関係の構築や、患者さんが自分の病気への理解を深めることを目的とした情報開示ですが、情報保護法の情報開示にも応じていきます。

 最後に情報の訂正や利用停止等の求めについてですが、このことも含めて、個人情報の取り扱いに関する患者さんの不満や疑問、ご要望に対処するため、医療機関には相談窓口を整備するよう努める義務が課されています。まずは受付で遠慮なく申し出て下さい。

 医療機関においては、患者さんの安全と病気の治療が最優先ですが、情報保護に関してもより整備していきたいと考えています。県医師会にも苦情相談窓口がありますので、問題がありましたらいつでもご相談下さい。