おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

 平成17年5月21日放送
パニック障害について
 
          
            宮崎県精神科医会  細見 潤

パニック障害とは、突然襲ってくる不安発作が主な症状です。動悸や呼吸困難感とともに、発狂してしまうのではないか、死んでしまうのではないかといった状態に陥ります。そのため、しばしば助けを求めて救急車を呼んだり、家族や友人に付き添われて病院を受診する人が多いのですが、身体的な検査では問題がなく、精神的なものとして精神科に紹介される場合が多いようです。また、発作のない時でも、発作に対する予期不安が出現し、飛行機や電車の中など、具合が悪くなった時にすぐに病院に行くことができない状況を避けたり、ちょっと気分が悪いと大事を取って家の中に引きこもってしまうといった生活面での障害が出てくることも良くあります。

治療は薬物療法と精神療法の二つを同時並行的に行ないます。薬物療法としてはSSRIという抗うつ剤を第一選択薬として用いますが、人によってはマイナートランキライザーといわれる抗不安薬を用います。薬物慮法だけで効果がある人も居ますが、それだけでは治療としては不十分で精神療法は必ず行ないます。特に不安について学習してもらい、上手に不安へ対応していくための生活態度を身に付けることはとても重要で、このことにより服薬は中止することもできます。

しばしばパニック障害のある人は、これさえなければという思いが強く、不安を何とか取り除こうと考えています。しかし、不安は私たちが安全に生活していくには必要なもので、不安になることが問題ではなく、不安に振り回されて自分のしたいことができなくなっていることが問題なのです。また、不安は、それから逃げようとすればするほど追いかけてくるので、逃げるのを止めることが必要です。不安はそのままにしておくことで自然に治まっていくものなのです。具体的には自分がやるべきこと、したいと思うことは、たとえ不安があっても断固として実行するよう指導します。厳しいと思われる人がいるかもしれませんが、そのことによって不安は自然に取れていくことを患者さんに身体で感じてもらう必要があります。不安は意志の力ではどうにもなりませんが、行動は意志の力で何とかなるものです。不安があれば何もできないのではなく、不安はあってもいろいろなことができるということを患者さん自身が実感できるような生活指導は治療的には極めて重要です。