おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第13回 3月29日放送分
「痴呆症」について
 
宮崎県医師会 理事 吉田建世

 

Q)痴呆とは?

 痴呆とは、種々の原因で脳が後天的に障害され、日常生活や社会生活が営めなくなった状態のことです。

Q)痴呆を起こす原因は?

 原因は、頭の病気と体の病気によるものとに分かれます。頭の病気としては、脳卒中によるもの、変性疾患といって脳の神経細胞が変化・減少するもの、頭の怪我などの後に血が溜まって起こる慢性硬膜下血腫、頭の中に脳脊髄液が大量に溜まる水頭症などがあります。また体の病気が原因には、甲状腺機能低下症などのホルモン異常、重症の肝臓病腎臓病ビタミン欠乏症などがあります。これらの中で、慢性硬膜下血腫や水頭症は手術などで痴呆の状態が改善され、体の病気によるものは、原因である元の病気を治療する事によって、痴呆症状が改善されます。つまり、その原因によっては、"治る痴呆"があるという事です。

 現在日本で多いものは、変性疾患であるアルツハイマー型痴呆脳卒中などの後に起こる脳血管性痴呆です。これらは、まだ現在の医療では治せませんが、初期の段階で診断して、適切な治療と対応を行うと、症状を改善し、進行を遅らせる事ができます。

Q)痴呆を疑う日常の変化には?

「同じことを何度も言ったり聞いたりする。」

「置き忘れやしまい忘れが目立った。」

「物の名前が出てこなくなった。」

「時間や場所の感覚が不確かになった。」

「些細なことで怒りっぽくなった。」

「財布を盗まれたと言う。」などがあります。

Q)そういった変化は、痴呆のどんな症状によるもの?

 痴呆の症状は、脳の機能が低下して起こった中核症状と、それに伴って起こる問題行動などの随伴症状とに分けられます。

 中核症状の中には、物忘れなどの記憶障害、時間や場所が分からなくなる見当職障害、手順を踏んだり、計画を立てて行動することが出来なくなる抽象的思考の障害や、怒りっぽくなるなどの性格変化などがあります。

 一方、随伴症状には、睡眠障害や、自分で物をしまった場所を忘れて、誰かに盗まれたと思い込む物盗られ妄想、夜になると急に精神錯乱の状態となる夜間せん妄、気分が落ち込むうつ状態などがあります。

Q)予防法は?

 予防法としては、まず危険因子である生活習慣病に気をつけることが必要です。そのためには、肥満に注意し、定期的な運動を行うことが必要となります。また、大切な事として、人と関わりを持つ事が挙げられます。これは精神面の維持に必要なことです。そしてストレスを貯めない様に楽しみなどを持ちましょう。また、快適な睡眠をとり、魚と緑黄色野菜を食べ、歯を大切にする事も痴呆の予防につながります。

まとめ)

 痴呆の治療には、早期診断、早期治療を行うことが、とても大切になりますので、痴呆が疑われる場合には、出来るだけ早く、専門医の診察を受けることをお勧めします。