おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第20回 5月17日放送
東洋医学の食養生(薬膳)
 
宮崎県東洋医会 井上博水

 

 東洋医学的食養生や、薬膳などの基本になる栄養学を、「伝統栄養学」と呼ぶことがあります。伝統栄養学では、現代栄養学でいうところの、栄養素やカロリーについて分析するのではなく、食材の味や性質、気候風土、さらには食事を摂取する人の体質や体調、年齢なども考慮して、身体にふさわしい食べ物を選び出し、献立を考えます。

 今回は、薬膳の考え方の中から、食材の五性(5つの性質)と五味(5つの味)について、極簡単に説明します。

 飲食によって体内に入ると身体を冷やす性質のあるものが寒で、その程度の弱いものが涼。身体を温める性質をもっているものが熱で、その程度の軽いものが温。この作用の強弱の程度によって、食材を熱性・温性・涼性・寒性に分け、これを「四気」と呼びます。

 熱・温および涼・寒の中間の性質で、身体を温めることも、冷やすこともしない食材の性質を「平」と表現し、「四気」に「平」を加えて、これを食材の「五性(薬性)」といいます。

 また食材を、その持ち味から、サン酸(すっぱい)・ク苦(苦い)・カン甘(甘い)・シン辛(ピリ辛い)・カン鹹(塩辛い)に分類します。これを食材の「五味(薬味)」といいます。これは単に味覚上の分類だけをいうのではありません。東洋医学では、この五味と人体の五臓(肝・心・脾・肺・腎)と五腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱)と関係を重要視し、五味はそれぞれ五臓・五腑に対応し、それぞれの機能を高めたり、損ねたりすると考えています。

 例えば冷え症の人は、熱性・温性の食材を選んだり、「辛」に分類される食材には、肝を損ねる作用をもつものがあるので、肝を保護するには「酸味」のものを併せて摂取するとよいのです。アルコール類は「辛味」に分類されるので、飲酒のときは、「酢の物」を食べるとよいということになります。

 このように、食材の五性・五味により、体質や体調を改善し、調えるのが薬膳です。毎日毎日の食事に用いる材料に、五性・五味の考えを当てはめて、健康に過ごしましょう。

 『日常の食事こそ、まさに、これ良薬!』 これこそが「薬(医)食同源」の極意であると思います。