おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第25回 平成15年6月21日放送 
不妊治療と相談窓口について
 
宮崎県産婦人科医会 戸枝 通保

 

 妊娠を望んでいるカップルが、2年以上妊娠に恵まれない場合を不妊症と呼びますが、その頻度は約10から15%といわれています。

 不妊症の原因は多岐にわたりますが、主なものは、男性側因子として、精子の数が少ない、動きが悪いなどの異常があります。女性側因子として、ホルモン異常、子宮や卵管の異常等があります。もちろん男女ともに異常がみられる場合や、逆に通常の検査でははっきりとした異常が見つからない場合もあります。

 女性側の検査として内診や超音波等による一般的な婦人科の検査の他に、基礎体温測定やホルモン検査、超音波等による排卵チェックや子宮卵管造影等の卵管通過性を確認する検査、腹腔鏡と呼ばれる直接お腹の中を観察する検査もあります。男性に関しては精液中の精子の数や動きを調べますが、ホルモン検査なども行われることがあります。

 治療に関しては、タイミングをあわせて性交をもっていただくという治療からスタートします。もちろん排卵誘発剤などを使用する場合もありますし、検査で異常が認められた場合はそれに応じた治療が行われます。さらに良好な精子のみを排卵日あわせて子宮内に注入する人工授精や、卵と精子を体外で受精させ子宮に戻す体外受精も行われる事があります。最近では精子の状態がきわめて悪く通常の体外受精では妊娠が困難な例に対して、卵に直接精子を注入する顕微授精と呼ばれる方法も開発されています。

 妊娠率は治療開始年齢によって大きく左右されますが、人工授精程度までの一般的な治療で50%程度の方が妊娠可能とされています。また体外受精等の治療を行えばさらに妊娠が期待できるようになってきています。

 治療に伴う問題点として、医学的な問題のほかに、精神的あるいは経済的な負担の増加も治療継続の障害になります。

 宮崎県では7月より不妊サポート事業を実施する事になりました。具体的には県内の3保健所(延岡、都城、宮崎中央)内に不妊専門相談センターを設置して、医師や助産師、カウンセラーによるチームを組んで幅広い相談に対応できる体制を整えることとなっています。宮崎県産婦人科医会としても面接相談への医師の派遣等を中心にこの事業を支援していく事になりました。