おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第32回 平成15年8月9日放送送
手のしびれと痛み
 
宮崎県整形外科医会 戸田 勝 

 

 今日は手のしびれと痛みについて話します。

 まず、しびれですが、手根管症候群(手根管は手掌の手関節よりで中央に位置する)という疾患があり、正中神経がここで圧迫されるのが原因で、おもに中年以降の女性で母指から環指にかけての知覚低下と早朝の痛みがあります。症状が進むと母指球筋(母指のつけねの筋肉)が萎縮してきます。治療としては、初期では安静とビタミン剤の内服で、症状が進めば手術が必要となりますが、外来手術が可能です。

 小指のしびれは、尺骨神経の圧迫が起きますが、尺骨神経管症候群(尺骨神経管は手掌の手関節より尺側に位置する)と肘部管症候群(肘関節の内側に位置する)があります。しびれただけでなく、手の骨間筋が萎縮するとボタンかけがしにくくなったり、握力低下が起きたりしますが、痛みは軽度です。尺骨神経管症候群は年齢、性に関係なく、良性腫瘍によるものが多いのに対し、肘部管症候群は、長年、肘関節を酷使してきた中高年男性に多く見られます。治療はやはり手術が必要となります。

 前腕に及ぶしびれは頚椎を含む疾患を考慮に入れます。打撲や捻挫などの外傷の既往のない手の痛みですが、腱鞘炎であるバネ指デケルバン病があります。バネ指は、屈筋腱が指のつけねで引っかかる状態で、デケルバン病は、母指を伸ばす腱が手関節の母指側で炎症を起こしたものです。安静と湿布で改善しない場合は腱鞘内注射を試み、症状再発すれば手術を勧めます。

 次に、指の第1関節の痛みと腫れですが、ヘバーデン結節という疾患で年齢と使いすぎによる関節軟骨の障害で関節リウマチとは異なります。治療は安静と湿布ですが、変形の強い例では関節固定という手術をすることもあります。

 最後にガングリオンですが、手背によくみられる腫瘤でゼリー状の内容物の詰まった袋で関節や腱鞘などから出ています。針を刺して、ゼリーがあれば、これと診断されます。痛みがあれば、摘出も可能です。