おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第33回 平成15年8月16日放送 
宮崎県の死産率と性感染症
 
宮崎県産婦人科医会 西村篤乃

 

 宮崎県の死産率は非常に悪い?

 死産は自然死産と人工死産の合計です。宮崎県の自然死産率は、全国平均もしくはそれより良い状態です。しかし、本県の場合、問題は人工死産率が異常高いことです。

 人工死産とは?

 母体保護法という法律のもとで行われる人工妊娠中絶は、妊娠22週未満までしか認められません。この場合、11週までは死産届等は不要ですが、12週を越してから22週未満までは死産届を出す必要があります。一般的には、中期中絶と言われている人工妊娠中絶です。

 本県の場合、この中期中絶の率(出生千対)が33.7で、全国平均18を大きく上回っていることが、宮崎県の死産率全体を押し上げてしまっているのです。

 

 なぜ宮崎県の人工死産は多いのか?対応策は?

 宮崎県もいち早く"性教育"を県医師会に事業を委託し、宮崎県産婦人科医会が事業を施行しています。本格的には平成6年から、県立高校60校に産婦人科医を学校協力医とし派遣し、性教育事業を展開していますが、今ひとつ効果があがっていないのが実状です。

 結論からいうと、中学生などの早い時期に、避妊等を含めた正しい性教育を幅広く、繰り返し実施することが重要です。

 

 望まない妊娠を減らすには?

 避妊することをパートナーにしっかり伝えること。女性は「NO」と言う勇気を、男性は女性を思いやる「やさしさ」を持つことを性教育を通じて幅広い年齢層に理解してもらうことが必要だと思います。

 

 最近若者の性感染症が問題になっていますが

 全国的にも大変問題になっています。健常者若年のクラミジアの感染の保有率が9〜10%と、イギリスの3%、ベルギーの1.4%に比べ、アメリカなみのトップクラスです。性教育の中で性感染症問題を十分理解してもらうと同時に、男女のコミュニケーションを通して対等の関係を築くような教育も重要です。