おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第34回 平成15年8月23日放送
寝耳に水
 
耳鼻咽喉科医会 宮永 敏 

 

 耳より相談室ですから、耳に関する耳寄りなお話です。

 題して、寝耳に水。

 中耳炎といいましても、急性中耳炎、慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎、滲出性中耳炎など色々あります。

その中で、お耳の中に滲出液が貯まる中耳炎、痛みを伴わない中耳炎を滲出性中耳炎といいますが、その気付きにくい中耳炎についてお話します。

 検診などで突然、「お子さんの耳に水がたまっていて、聞こえが悪いですよ。お近くの専門医にご相談ください」と言われたお母さん、寝耳に水だと思います。

 学校検診で滲出性中耳炎と書かれた黄色い用紙をもらって、何の事だろうなと思われた親御さん、本当に寝耳に水だと思います。

 耳の穴の奥には鼓膜があります。音がすると鼓膜が震えて音を内耳から脳に伝えます。この鼓膜の奥の空間に滲出液が貯まった状態を滲出性中耳炎といいます。

 滲出液にはそれこそ水のようにサラサラした物から、ゼリーのようにネバネバした物までさまざまです。その滲出液がたまればたまるほど聞こえは悪くなります。

 太鼓に水を入れてたたいたところを思い浮かべてみて下さい。音がトントコトンと響かず。ボヨンボヨンと鈍い音がすることが想像できると思います。こんな具合で耳の聞こえが悪くなっているのです。

 普段子供たちの聞こえ方についてあまり注意を払っていないと、子供たちの聞こえの悪さに気づかないことがままあります。

 そういえば、テレビの音を大きくしているなあ、近くで見てるなあ、

 呼んでも返事がないし、エッと聞き返すことが多いなあ等

思い返してみると子供たちは聞こえていなかったのかなと思える節があるお母様方、まさかと思っていらっしゃるお母様方、寝耳に水ということがありえるのです。

 滲出性中耳炎を放っておくと、後が大変です。大人になっても中耳炎を繰り返したり、もっとたちの悪い中耳炎になったり、難聴になってしまったり、悪いお耳と一生お付き合いしなくてはならなくなってしまいます。

 さて、次は治療です。

 治療としましては、まず内服、お薬で滲出液がなくなるようにします。だめなら鼓膜切開をして、中に貯まっている滲出液を排出します。それで終わりではありません。滲出液は、また貯まることが多いのです。その時はまた鼓膜切開をします。だいたい1年、2年、と治るまでにはかかります。しかし、きちんとした鼓膜切開ならば何度しても何の問題もありません。滲出液が貯まるたびにきれいに取ってあげることが大切なのです。お耳の良し悪しを決める側頭骨、お耳の周りの骨ですが、発育するのはだいたい10歳位までといわれております。お耳に滲出液の貯まっていない、よい状態を保って、側頭骨をきちんと発育させてあげることが重要です。お熱が出るとか、痛がるとか、小児科でお耳が赤いと言われたとか、そのような判りやすい症状がなく、お母様方が、そして本人さえも気がつかないうちに、悪化してしまう怖い中耳炎、それが滲出性中耳炎です。寝耳に水にならないよう、お子様の健全なお耳の発育の為に、少しでも、聞こえというものに関心を持って頂けたら、と思います。そうすれば、この滲出性中耳炎というものを早く発見し、早く治療することができるのですから。たまにはお子様の聞こえを注意深く観察してみましょう。