おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第36回 平成15年9月6日放送
胃の病気とピロリ菌
 
宮崎県内科医会 原口靖昭 

 

 胃には胃酸という強い酸がありますので、以前には胃には細菌はいないと信じられていましたが、1983年にオーストラリアのワレンとマーシャルという人が胃からこの菌の分離培養に成功し、ピロリ菌が胃の中に生息していることを報告しております。

 発見されてから20年の間にさまざまな研究から、ピロリ菌は胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの病気に深くかかわっていることが明らかにされてきました。感染する方法は、よくわかっていませんが、日本で行われた調査によると、若い人のピロリ菌感染は比較的少ないのですが、40歳以上では約80%の人がピロリ菌に感染しています。衛生環境が整った現代では、ピロリ菌の感染率は著しく低下しており、今後の新たな感染にはあまり神経質になる必要はないでしょう。

 胃・十二指腸潰瘍の患者さんは、ピロリ菌に感染していることが多く、潰瘍の発生、さらに再発や治りにくさに、ピロリ菌が関係しています。胃にできる腫瘍の一部にも関係があることが判っています。薬を服用してピロリ菌を退治する治療を「除菌療法」といいます。胃潰瘍や十二指腸潰瘍の人がピロリ菌に感染している場合、この除菌療法を行うことによって、多くの潰瘍の再発が抑制されることがわかってきました。現在、わが国の医療保険で除菌療法が認められているのは、主に胃潰瘍または十二指腸潰瘍の患者さんです。基本的には2種類の抗生剤と酸分泌を抑える薬を一週間内服します。

 もしも、あなたが胃潰瘍や十二指腸潰瘍であっても潰瘍の原因は他にもありますので、除菌療法が必要かどうかは主治医とよく相談してください。