おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第40回 平成15年10月4日放送
切らずに治す食道癌の治療
-放射線化学療法
 
宮崎県放射線科医会 宮ア貴浩
 

 

 食道癌にかかるのは、喫煙歴の長い方やアルコール多飲者が大部分で、そのためか食道癌のおよそ85%は男性で、特に50歳以上の高齢者が多くを占めています。

 食道癌は進行してくると食物のつかえ感や胸の違和感を感じるようになりますが、早期のうちはまったく症状はありません。リンパ節転移のない早期の食道癌は、内視鏡的粘膜切除術といって胃カメラを使って比較的簡単に切除することが可能です。

 それに対し、より進行した食道癌はこれまでは外科手術で切ってしまわなければ完全に治すのは難しいと考えられてきました。ところが放射線治療と抗癌剤をうまく組み合わせた治療により手術と同じくらいの治療効果が得られることが最近わかってきました。これを放射線化学療法と言います。

 具体的な方法は施設によって多少異なりますが、抗癌剤の点滴と同時に、放射線を1日1回、月曜から金曜まで週5回を3週間照射します。それから2週間休んだ後に、もう1回同じように抗癌剤と同時に放射線治療を3週間行います。これで全部で約2か月の治療となり、入院をしていただいた上で治療しています。

 放射線化学療法は手術のように体にメスを入れるわけではありませんので、体に対する負担が手術に比べ格段に軽く、治療により癌が消えてしまえば健康な頃とほとんど同じように食事や生活をすることができるという大きな利点があります。逆に欠点は、副作用で食欲が一時的に落ちたり、血液中の白血球が減少したり、放射線によって食道や肺に炎症をおこすことがあることなどです。しかし先ほどの利点はこれらの欠点を補って余りあるものと思います。

 これまでは手術しかなかった食道癌に対して、より負担の少ない放射線化学療法という新しい選択肢が増えたことは患者さんにとって大変大きなメリットと思われます。最近はインターネットなどでこの放射線化学療法のことを知り、自らこの治療を希望して来られる患者さんも増えてきています。