おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第41回 平成15年10月11日放送 
中高年の膝の痛み
 
宮崎県整形外科医会 岡田光司

 

 50歳前後より歩き始めとか階段を降りる時に膝が痛みだすことがありますが、多くは膝内側の軟骨の摩耗・損傷など(変形性膝関節症)によるものです。人間の関節は100年以上機能を発揮するものですが、この中高年の膝の痛みは二足歩行の人間にとって高齢化に伴う宿命的な症状だと言えます。日本では約1,000万人の患者が推定され、症状悪化により歩行困難となり、身体活動が制限されてしまいます。特に高齢者では精神、身体機能の低下により痴呆、寝たきりを引き起こすことになります。

 症状が初期ならば膝関節安定化、関節荷重負荷軽減(体重減)を目指して(1)大腿四頭筋強化訓練(膝伸展力強化)、無理のない(2)ウォーキング(スロープ利用、後ろ向き歩行)などが症状改善、進行予防に有効で、先ず行ってみるべきです。またO脚があれば(3)足底板を装着して膝内側に偏った荷重負荷の軽減を行います。疼痛、炎症には(4)消炎鎮痛剤(内服、湿布など)を対症的に適宜使います。また適切な(5)温熱刺激(6)関節液穿刺と潤滑作用のある(7)ヒアルロン酸の注入は損傷したり変性した軟骨組織の再生や修復を促進すると言われ、関節機能の維持に有用です。

 症状進行例には外科的治療、例えば関節鏡視下に(8)損傷軟骨切除などを行ったり、O脚の(9)矯正手術(高位脛骨骨切りによる下肢アライメント適正化)を行ったりします。更に骨軟骨が破壊され関節機能が破綻し、60歳以上で歩行困難が著しい場合には、(10)人工膝関節置換術が適応となります。手術を望まない場合、手術出来ない場合には、(11)高分子量ヒアルロン酸の関節内注入も試みられています。

 高齢になっても歩くことが出来るように、膝関節機能を長期的に維持するため、上記の適切な対応が中高年、特に閉経前後の女性には骨粗鬆症対策と併せて重要です。