おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第42回 平成15年10月18日放送
アルコール依存症について
 
宮崎県精神科医会 細見 潤
 

 

 アルコールは安価で即効性のあるストレス対策として多くの人が利用しています。しかしながら、アルコールは飲み方によっては危険なものであり、アルコール依存症という進行性で死に至る病気を発病することがあります。

 アルコール依存症は飲酒に対するコントロールが失われる病気であり、意志が弱い人がなるというわけではありません。アルコール依存症になった結果、アルコールに対して意志が働かなくなるのであり、危険な飲み方を続ければ誰でもアルコール依存症になる可能性があります。

 ちなみにアルコール健康医学協会によれば安全な飲み方とは1日にビールであれば大瓶2本以下、清酒であれば2合以下とし、週に2日は飲まない日を設けるなどとしています。

 アルコール依存症は健康な価値観を失わせます。「飲んで死んだら本望」というのは自分の命とアルコールとを天秤に架けて自分の命よりもアルコールの方がその人にとって価値があるということであり、家族や友人が心配してアルコールを控えるようにとの忠告に耳を傾けないのも同様です。

 また、アルコール依存症は「否認の病い」とも言われています。そのために肝障害などの身体的な治療を求めて一般身体科を受診することはあっても、自発的にアルコール依存症を取り扱う専門医を受診することは殆どありません。このような時は、困っている家族や友人が先ずは専門医に相談することから治療は始まります。何故なら彼らはアルコール依存症者に振り回されていることが多く、そのことがアルコール依存症という病気に対する本人の自覚を阻害していることが多いからです。

 治療目標は、単に酒を飲まなければ良いというものではなく、その人がアルコールを必要とする窮屈な生き方、不健康な生き方に気づき、自己改革していくことです。この作業を進めるためには、専門医への受診とともに、自助グループへの参加は極めて有効です。