おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第45回 平成15年11月8日放送 
下肢静脈瘤の診断と治療
 
宮崎県外科医会  湯田敏行

 

【下肢静脈瘤とは】

 脚の静脈がこぶのように膨らんだ状態をいい,ほとんどは原発性の後天性静脈瘤です。下肢の静脈は深部静脈と,表在静脈(大伏在,小伏在静脈)に分けられ,表在静脈は膝の後ろと,鼠径部で深部静脈に合流します。下肢の静脈には多数の逆流防止弁がついており,血液の流れが常に心臓に向かって一方通行となるように働いています。

【静脈瘤はどうしてできるのか】

 静脈の弁がこわれ,血液のよどみがおこり,さらに逆流が起こることが静脈瘤の成因です。表在静脈の弁で初めに壊れやすいのは,深部静脈に合流する 鼠径部と膝の裏です。誘因として最も多いのは妊娠と長時間の立ち仕事で,太り過ぎや加齢も誘因となり,生まれ持った静脈の弱さも大きく関与します。

【静脈瘤の症状】

 1. 外観(美容的な問題)
 2. 下肢のだるさ,痛み,けいれん,熱感,張り,むくみ

【静脈瘤の合併症】

 静脈鬱滞症候群
  皮膚炎,湿疹,かゆみ,色素沈着,下腿潰瘍など
 その他の合併症
  瘤内血栓,静脈炎,深部静脈血栓症(まれ)

【静脈瘤の診断】

 医師による診察(超音波検査,静脈造影など)

【静脈瘤の治療】

 ヒポクラテス(医の父)(紀元前460年〜377年)

   「静脈瘤の治療には圧迫包帯を用いる」

 1.保存的治療:弾性包帯や弾性ストッキングによる圧迫療法
 2.手術療法:静脈抜去・切除術,高位結紮術,不全交通枝結紮術
   手術に伴う合併症はほとんどなく,皮下出血やまれに下肢のシビレ,痛みがみられますが,短期間で軽快します。
 3. 硬化療法:静脈の中に硬化剤を注入
   浸透性硬化剤(高張食塩水),洗浄性硬化剤(ポリドカノール)

【静脈瘤再発はあるか】

   治療の時点で異常がなかった静脈に新たな弁不全を生じ,静脈瘤が出てくる可能性はありますが,10% 以下です。

 当科症例は約600例(女性7割,男性3割)です。手術:静脈抜去・切除約470例,高位結紮約130例,硬化療法約300例(多くは手術と併用)。