おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第49回 平成15年12月6日放送 
見逃せない病気-脂肪肝
 
宮崎県内科医会 弘野 修一

 

 脂肪肝は人間ドックなどで腹部超音波検査をすると5人に1人は指摘されるほど多い病気です。脂肪肝とは肝臓の細胞(肝細胞)の30%以上に脂肪が溜まった状態をいいます。血液検査では診断できず、腹部超音波検査や腹部CTなどで診断が可能です。原因は主に過食による肥満・糖尿病・高脂血症、それと飲酒です。脂肪肝と肥満は密接に関係しており、腹部超音波検査による検診では肥満の方(BMI注 25以上)では5割に脂肪肝があるのに対して、肥満でない方(BMI 25未満)では1割にみられるのみです。

 腸で吸収された食事中の糖質や脂肪が肝臓内で脂肪酸と中性脂肪になります。また内臓脂肪組織から放出された遊離脂肪酸は肝臓で脂肪酸になります。肝臓は脂肪酸を処理したり、中性脂肪をVLDLという脂質に変えて血中に放出したりしてバランスを取っています。過食や肥満により肝臓にやってくる糖質・脂肪酸の量が、肝臓内でのこれらの処理能力を上回った場合、肝臓に脂肪が溜まってくるわけです。この脂肪肝はずっと良性のものだと考えられていました。ところが最近、脂肪肝の中には肝臓が壊れて(すなわち肝炎が起こって)病気が進行し、肝硬変や肝癌に至るものがあることがわかってきました。この脂肪肝をベースに起こった肝炎を脂肪性肝炎といいます。もちろんすべての脂肪肝が肝炎を起こすわけではありません。この病気は生活習慣と密接に関連しますので、新しい生活習慣病ともいえます。推計によると我が国における脂肪性肝炎は、約100万人に達すると言われています。ですから決して少ない病気ではありません。現在、肥満症や糖尿病など生活習慣病に伴う脂肪肝は増加しつつあるので今後、脂肪性肝炎も増えてくることが予想されるのです。

 脂肪性肝炎の原因について詳細はまだ明らかではありませんが、やはりなんといっても第一の原因は過食・運動不足です。このため脂肪が蓄積した肝細胞の中で起こる様々なイベントが脂肪性肝炎の発症に関連していると考えられています。また遺伝的体質も関連していると言われています。脂肪肝であって、かつ肥満の程度が大きい人、GPT値の高い人、糖尿病を合併している人などは脂肪性肝炎になりやすいと考えられます。

 脂肪性肝炎を防ぐためには、まず適度な運動を心がけ、過食をしないことです。検診などで脂肪肝といわれ、またGPTが高値の場合には注意が必要ですので医師の診察を受けるようおすすめします。また、定期的な検査も大事です。

 

 注:BMI=体重(kg)/身長(m)2