おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第50回 平成15年12月13日放送
高齢者の腰痛
 
宮崎県整形外科学会  谷村 俊次
 

少子高齢化社会の到来で,高齢者の腰痛,そのQOL、ADLにおける障害は大きな社会問題となりつつある。何歳から高齢者かという明確な定義はないが,今回65歳以上の腰痛(3か月以上ADLに支障をきたした状態)を対象に私見を述べたい。有病率は厚労省20%弱,他家の報告をまとめると一般には40%前後と思われる。多くは腰椎変性疾患(60%),骨粗鬆症(30%)が原因であるが,残り10%は癌の骨転移,原発性悪性骨腫瘍,結核等の感染症,他臓器疾患のこともあり,綿密な問診,理学所見,血液生化学検査,レ線・CT・MRI・骨シンチ等画像検査による正確な診断がまず必要となる。治療は当然それぞれの原因で違ってくるが,今回は腰椎変性疾患について述べる。

 
1.腰椎の生理的前弯を保持するような日常生活での正しい姿勢の指導

2.疼痛軽減,局所の血行改善,筋攣縮軽減を目的とした物理療法(ホットパック,レーザー,骨盤牽引,TENS等)

3. 低負荷運動療法:深呼吸運動,胸背筋ストレッチ,腹背筋大臀筋の筋力増強訓練,水泳,水中歩行,散歩等が主体となる。

疼痛に対する長期安静は廃用性症候群の原因となる危険性があるので,2日位の安静をめどとする。

種々の薬物療法はもちろん有用であるが,高齢者のため,内科合併症による併用薬剤も多く,また肝血流の減少,体脂肪増加,血清アルブミン減少等の生理学的要因により,副作用の出現も多く,その投与量方法については慎重を要する。

また,うつ病,心気症,心身症等精神医学的要因が主体である事もあり,心理ケアの必要なことがある。