おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第51回 平成15年12月20日放送
更年期障害について
 
宮崎県産婦人科医会 山口昌俊

 

月経という現象は、女性ホルモンと黄体ホルモンという二つのホルモンが関係しており、この二つのホルモンは卵巣で作られています。卵巣ホルモンの産生は、40〜45歳を過ぎるころから次第に減少してきます。女性ホルモンの産生低下に伴い、多彩な症状を呈する疾患が更年期障害です。

更年期障害は女性であれば誰にでも起こりうる疾患ですが、すべての女性に起こるわけではなく、むしろ更年期障害を起こさずに閉経してしまう女性の方が多いといわれます。症状として、突然顔が火照るという、英語でHot flushと呼ばれる症状は比較的特異的ですが、それ以外はどんな症状があってもおかしくなく、不定愁訴と呼ばれます。眠たくてしょうがないという人もいれば、眠れなくて困ると訴える人がいるように、全く正反対の症状を訴えることもあります。これは、更年期障害が、女性ホルモンの不足という原因以外に、精神的なストレスなどが複雑に絡み合って発生するからで、更年期障害は「心身症(心の病)」の一つであるということもできます。そのため、更年期障害といわれる方には、女性ホルモンを補うだけで症状が消失する狭義の更年期障害は1/3しかなく、カウンセリングや睡眠薬の投与が必要な症例や、女性ホルモンとは関係のない、本来なら更年期障害とはいえない症例まで含まれています。

したがって、ただ単にホルモン剤を補うだけでなく、心の中の悩みを相談することも大切です。最近、女性ホルモン剤の長期の服用が、必ずしも体によいことばかりではないという結果がアメリカで発表され、波紋をよんでいますが、更年期障害に対しては、危険性より有益性がはるかに高いとされています。本来、更年期障害は女性ホルモンが不足するために起こる疾患ですから、不足するホルモンを補充することはとても理にかなったことです。「更年期障害かな?」と思ったら、まずはかかりつけの先生に相談されることをお勧めします。