おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第52回 平成15年12月27日放送
高齢者の聴こえの問題
 
宮崎県耳鼻咽喉科医会 柊山幹子
 

 

 一般的に、年をとると聴力も生理的に低下しますので、聞こえが悪くなるのは仕方のないことと思われています。しかし不自由さの質や程度は個人差があり、環境や生活様式にも左右され一様ではありません。高齢者の聴力は、感音性難聴つまり音を感じる部分での障害のため治療効果は期待できないことが多いのですが、耳垢が詰まったり滲出液が中耳にたまったりする場合は治療によって改善します。耳鼻咽喉科ではどんなタイプの難聴か聴力検査を組み合わせて診断します。感音性難聴では言葉を明瞭に聞き分ける能力が低下している場合があります。また耳鳴りで気づかれる場合も少なくありません。日常生活に不自由が出てきたら補聴器を適切に使用することが大事です。どちらの耳につけるのが良いかどの程度役に立つか予想して補聴器のタイプを選び、調整します。聴力障害が高度の場合は身体障害者福祉法に補聴器を交付する仕組みがあります。

 高齢者の難聴ははじめ、声は聞こえるけど話の細かいところが分からない、少し離れると聞き取りにくいなどの症状で現れます。性格にもよりますが、聞き取れないのをそのままにしていたり適当に受け答えしたりするようになると、だんだん物事に消極的になってきます。高齢者には、ゆっくりはっきり一言一言、区切って話しかけるのが優しい話しかけ方です。補聴器が適切に合わせてあれば、普通の大きさの声で十分です。生活の中で言葉によるコミュニケーションは大切です。また今特に問題になっている介護の場面でもそうです。ある調査では痴呆の発症前後に家族が気づいた症状が聴覚障害と答えた家族が約3割弱だったそうです。補聴器は残された聴力を最大限に活用しようとする道具です。よりよいQOLのため聴覚に関しての適切な指導が大事と思われます。