おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第54回 平成16年1月10日放送
がん死亡のトップが「肺がん」!- 知っておきたい最新の診断法と禁煙法
 
宮崎県外科医会 松崎 泰憲
 

            

「肺がん」が今、世界的に増加しています。わが国でもがん死亡の第1位です。最も効果的な対策としては「小さな肺がんのうちに見つける」ことです。早期であれば今までのように胸を大きく切開することなく、小さな傷ですむ最新の「胸腔鏡手術」など患者さんにやさしい手術による治療も可能になります。

 最新の診断法としては今、この小さな肺がんのうちに見つける「ヘリカルCT検査」が注目されています。これは体をらせん状に、すき間なく高速で撮影する検査で、従来の検診では見つけられなかった、小さな肺がんや特殊な肺がんを「短時間に被曝線量も少なく安全に」発見することができるのです。横になって15秒間ほど息を1回止めるだけの簡単なものです。私自身もヘリカルCT検査で検診を受けています。

 肺がんの治療は外科手術、放射線療法、化学療法治療法が基本で、がんの組織型と進行度により組み合わせが決められます。早期の肺がんであれば手術により5年生存率は80%と治療成績も向上してきています。

 一方、肺がんの最も重要な危険因子のひとつは喫煙です。喫煙量の多いほど(毎日の本数×喫煙年数=600以上)肺がん発生の危険は増大します。喫煙は肺がん以外のがんの原因のみならず慢性閉塞性肺疾患(95%が喫煙が原因)、心筋梗塞、脳卒中、歯周病、骨粗しょう症、顔面のシワ、老化の促進などの原因にもなるのです。禁煙ができないのは意志が弱いからではなくニコチン中毒のせいです。そこで最近注目されているのが、このニコチンを含むシールを毎日貼るだけで、かなり楽に禁煙できるニコチンの代替療法です。禁煙を決断した動機が明確で、医師と相談しながら行った人の禁煙成功率は、2カ月で約8割と高い効果が上がっています。ご主人がヘビースモーカーの奥さんが、夫のたばこの煙が気になり、病院でヘリカルCTを撮ったところ早期の肺がんが見つかりました。胸腔鏡手術で済んだため一週間で退院でき、今はもうすっかり元気にされている方がいます。

 このように、夫が喫煙者の場合、喫煙しない妻の肺がん死亡率は2倍に増えます。まさに「他人の煙が命を削る」のです。どうか家族の健康のためにも禁煙を実行してください。さらに、怖がっていては見つかるガンも見つかりません。手の打てる小さいガンを見つけようという勇気と大切な家族のためにも健康でいようという意識で検診に臨んで、大切なあなたの「肺」も守ってください。