おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第56回 平成16年1月24日放送
アトピー性皮膚炎について
宮崎県皮膚科医会  多田 茂
 

          

 アトピー性皮膚炎は、乾燥肌の人の首、肘、膝に湿疹ができ、治療すればよくなりますが、また再発する、繰り返しの多い病気です。食事が原因と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、それは原因のほんの一つに過ぎません。もっと大きい要因は皮膚のバリアー機能の低下です。皮膚の表面は皮脂という脂の膜によって守られています。アトピーの人はこの膜が薄いため、日常生活で触れる汗、ほこり、石鹸、シャンプー、下着に付いている洗剤の残留などが、皮膚の中に入りやすく、このようなものでも簡単に湿疹が起こるのです。

 基本的な治療は、痒みに対しては痒み止め(抗アレルギー剤)の内服、ステロイドの塗り薬(外用)です。しかしステロイドを過剰に長期間使用すると、皮膚が薄くなったり紅くなったりというステロイド皮膚炎が起こる場合もあり、いかに最少の量で病気をコントロールするかがポイントになります。

1.適切な軟膏を選ぶ

 ステロイド軟膏には強いものから弱いものまで5段階の種類があります。程度、年齢、部位によって使い分ける必要があります。

2.湿疹のある所のみに使う

 手で軽く触れて、まわりの皮膚と異なりカサカサ、ブツブツ触れる所が湿疹です。全体にざっと使うのではなく、手で触れながら、湿疹のある場所のみに使います。

3.少量で十分

4.強く擦り込む 

薬の効きがよく、速くよくなり、そのぶん軟膏が少なくてすみます。

5.完全によくなるまで使う

 痒みもおさまり、かなり良くなっても、湿疹が少しでも残っていれば、すぐにまたひどくなります。一方完全に治っていたら少なくとも2週〜4週は再発しません。

6.必ず再発するので、初期の段階で軟膏を使い始める

 湿疹が軽ければ弱い軟膏を短期間使用するだけで治癒するので、量が少なくてすみます。

7.皮疹のない部位、時期も保湿剤で皮膚を保護する

 

以上ステロイドを賢く使えば、かなりひどい例でも副作用を起こさず使用で

きます。皮膚に刺激になるものはできるだけ避け、運動後はすぐにシャワーを使うなど、皮膚を清潔に保つ事も重要です。