おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第6回 2月8日放送分
プライマリ・ケアと共感
 
宮崎県医師会 常任理事 早稲田 芳男

 

 宮崎県医師会は、歯科医師会、薬剤師会,看護協会,栄養士会など11団体を核に平成11年12月2日、宮崎県プライマリ・ケア研究会を創設しました。本会はプライマリ・ケアを通じた多職種間との連携協調を推しすすめるための事業です。これまでに、年2回の研究会を開催し、さらに宮崎県プライマリ・ケアニュースを隔月刊で現在までに通算20巻を発行しています。いずれの号もほとんど特集編で読みごたえのある内容と自負しております。

 今回、その基本理念のひとつでもあり、郷里の先輩・高木兼寛先生の「病をみずして病人をみよ」を解説してみましょう。まず、「病をみずして」は診断を簡単にしてはならないという意味です。英語のdia-gnostic(=診断)という単語はラテン語で(dia)の認識(gonostic)を意味するもので、これまでの経過(人生)と今後の経過の間の認識が診断ということになります。すなわち今後の経過を人間学的に受容できるメニュー提示ができねばならないし、診断される側の立場を十分に尊重せねばなりません。さらに、障害を障害でないようにする努力をし、それらの努力の上に築かれた信頼関係の中ではじめて診断は許されるのではないでしょうか。それでも診断したことへの責任が生じていることを忘れてはなりません。

 次いで「病人を見よ」というのは症状の結果として出現する生活障害をみのがすなという意味と考えることにしました。  

(1)身だしなみ、(2)生活リズム、(3)疎通性(理解・伝達)、(4)自己表現(主張)、(5)柔軟性、(6)集中力と根気、(7)常識的行動・マナー、(8)対人交流、(9)余暇、(10)役割意識と行動などについて他者からみた客観評価にとどまらず、本人自身の自己評価を十分に取り入れて、それらのこまごまとした障害をなくすこまごまとした努力が必要という視点です。

プライマリ・ケアを実施するのには患者(利用者)への深い理解と共感が必要であり,密接な信頼関係が前提となります。