おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第63回 平成16年2月21日放送
乳がん検診のすすめ
 
宮崎県外科医会 前田 資雄

 

現在、日本では年間約40,000人の女性が乳癌に罹患し、女性の悪性疾患の罹患率では胃癌とほぼ同じになりました。乳癌の場合2 cm以下の癌でリンパ節転移がなければ10年生存率は90 %程度で、進行癌では生存率は低下し、全乳癌患者の約30%が癌の転移のために死亡します。 このように、乳癌も他の癌と同じように早期に発見されるほど予後は良いのは当然ですが、早期発見するための基本的な検査は、視触診がされてきました。最近、超音波検査および、マンモグラフィー(乳腺のレントゲン撮影)も施行されるようになってしばしば触れないような乳癌が発見されるようになりました。

癌が疑われた場合、最終診断には細胞学的もしくは組織学的診断が必要です。乳癌と診断されれば治療法は外科的な乳房切除が主ですが、抗癌剤やホルモン剤を用いる化学内分泌療法、放射線療法もあります。以前は乳房切除といえば乳腺、腋下のリンパ節のみならず、胸の筋肉(胸筋)も一緒に切除していましたが、現在は胸の筋肉を残す手術になりました。さらに最近の10数年は、乳房全体を切除するのではなく、腫瘍の大きさや部位によっては腫瘍をふくめた乳腺の一部の切除と腋下のリンパ節廓清を行い、乳頭と乳房の大部分を残す乳房温存術が行なわれることが多くなり、この術式に放射線療法や化学内分泌法を組み合わせると従来の乳房切除の成績と変わらないと報告されています。現在日本でも乳癌全体の30〜40%の患者さんがこの治療を受けています。

日本人の乳癌の頻度は30歳代から増え40歳代でピークを示します。とくに、初潮年齢の早い人、経産回数の少ない人、初産年齢の高い人、授乳期間の短い人、閉経年齢の遅い人、肥満、動物性脂肪を多く摂取する人、乳癌の家族歴のある人、乳腺症の既往のある人等の乳癌の危険性が高い人は、40歳前後からマンモグラフィーや超音波検査をふくむ乳癌検診を受けることをお勧めします。また乳房の自己検診も毎月1回、生理の後4 〜5日頃必ず実行するようにしましょう。なんどもくり返していくうちに、自分の乳房の形やかたさがわかるようになり、ちょっとした変化も発見できるようになります。そして、わずかな変化があった時はすぐに病院を受診して下さい。