おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第64回  平成16年3月20日放送

周期性嘔吐症(自家中毒症)について

宮崎県小児科医会 川口健二

 

 周期性嘔吐症は、自家中毒症、またはケトン血性嘔吐症ともいわれます。周期性嘔吐症は、2歳から10歳ぐらいで、体の線が細く繊細な子どもに多くみられ、風邪などの発熱時や遠足の後、また発表会の前後などに、急に顔色が悪くなり、腹痛、吐き気、頭痛を訴え、その後何度も嘔吐を繰り返します。尿検査でケトン体という物質が出ていれば、自家中毒症と診断します。同じような症状を何度も繰り返すことから、周期性嘔吐症ともいわれます。

 

 通常私たちは、ブドウ糖という糖分を燃やして体を動かすエネルギーを作っていますが、自家中毒症の場合は、ブドウ糖をエネルギー源として利用する回路がうまく働かなくなり、脂肪が主なエネルギー源になります。脂肪がエネルギー源として急に燃えると、その過程でケトン体という物質ができます。ケトン体は酸性の物質でリンゴが腐ったような特有の匂いが有り、体に溜まると、吐き気、頭痛、腹痛を催し、脳の嘔吐中枢を刺激し、頻回に吐くようになります。2歳から10歳ぐらいの子どもは、ブドウ糖や脂肪の代謝に関する脳の中枢や、自律神経の機能が安定していません。自律神経には交感神経と副交感神経があります。交感神経は体の活動時や緊張している時に、副交感神経はリラックスしている時に優勢に働きます。子どもに限らず私たちは、交感神経が活発に働くと、脂肪の代謝が盛んになります。この年齢の子どもに肉体的、精神的なストレスが加わると、ストレスに過敏な子は交感神経が優位になり、エネルギー源がブドウ糖から脂肪に代わり、ケトン体が体に溜まって、自家中毒症特有の症状が現れます。

 

自家中毒症の治療は、軽症であれば吐き気を抑える薬を、座薬や飲み薬で処方します。吐き気が治まるまで原則として絶食とし、糖分を含んだイオン飲料、薄めの果汁を1口、2口少量ずつ頻回に与え安静にします。それでも嘔吐が続く場合は、点滴して糖分、水分を補給することが必要になります。点滴して排尿とともにケトン体が体の外に排泄されれば、症状は速やかに良くなります。食事は吐き気が治まってから始めますが、脂肪分の多いものは避け、うどんやお粥などの炭水化物を少しずつ与えてください。牛乳や油を使ったスナック菓子は控えましょう

 

 ほとんどの子どもは10歳を過ぎてブドウ糖、脂肪の代謝が安定すると自然に起こさなくなりますが、重症の自家中毒症を頑固に繰り返す場合は、ホルモン異常や代謝異常症、中枢神経の病気などを除外する必要があります。