おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

 平成16年5月8日放送
前立腺がん検診について
 
          宮崎県泌尿器科医会 村岡 

 前立腺癌は、欧米では患者数、死亡率ともに1〜2位を争う高齢男性の代表的な悪性腫瘍です。わが国においては、欧米諸国ほどは多くはありませんが、近年急速に増加の一途をたどっていています。その原因としては、平均寿命は延長、つまり高齢社会になったことと、生活様式の欧米化、特に食生括において肉や脂肪を多く摂るようになってきたことが考えられています。事実、ハワイ在住の日系2世や3世の方は、同じ日本人という人種にもかかわらず、前立腺癌の発生率が高いことが知られており、前立腺癌が生活環境(特に食生活)と大きく関係していることを示唆します。その他に、遺伝的要素も関係しており、父親や兄弟が前立腺癌の方は、そうでない方に比べ2倍以上前立腺癌になる危険性が高いとも言われております。

 他の癌と同じように、前立腺痛も早期発見・早期治療が重要ですが、早期発見を可能にしてきたのが血清PSA(前立腺特異抗原)検査です。前立腺癌診断の基本的手段としては、PSA検査の他に、直腸診、経直腸的超音波診断がありますが、PSA検査が最も感度が高いだけでなく、患者さん負担も少ないため、現在では広く用いられております。血清PSAが4.1ng/ml以上の場合、あるいは4.0ng/ml以下でも、他の検査で異常を認める場合は、泌尿器科専門医での診察、精密検査が必要になります。前立腺癌が強く疑われる場合、前立腺生検(前立腺から小さな組織を採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を調べる検査)により、確定診断をおこないますが、現在では、機械で針を一瞬のうちに前立腺に刺しますので、ほとんど痛みはありません。

 カナダのケベック州やオーストリアのチロル地方で、PSAによる前立腺癌検診を行うことにより、死亡率が減少するか否かの大規模な試験が行われました。その結果、検診を行った方が、早期癌の発見が増加することにより、適切な治療が行われ、死亡率が減少したことが証明されました。近年、わが国においても、各自治体や施設が、PSA検査を用いた前立腺癌検診を取りいれはじめています。PSA検査は、他の血液検査と同時に行えますので、そのような機会があれば、積極的に検診を受けられることをお勧めします。検診が行われてない地区の方でも、尿の出が悪かったり、回数が増えてきたりといった何らかの症状がある方や、近親者に前立腺癌の方がいらっしゃる方は、医療機関へご相談されることも必要だと思います。