おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

  平成16年6月26日放送

高齢者と漢方

宮崎県東洋医会 長井 章

 

65歳以上の高齢者が総人口の19.0%を占め、いよいよ高齢化社会を迎えました。今後ますます進む高齢化社会に漢方医療は有意義と考えます。

漢方は1方剤で多数の病気の治療が可能であり、また、西洋薬との併用で薬剤の種類を減らし、患者の肉体的・経済的負担を少しでも軽くする事ができると考えます。

漢方には、体だけ治さずに心もー緒に治そうという「心身一如」(しんしんいちにょ)の考え方があります。一旦病気になると寝たきりになってしまう症状を緩和し、病態に応じて体を動かし、自分で食べる気力を回復させるのが漢方の目的です。

次に高齢者に主に用いる漢方治療について紹介します。

脳卒中後遺症・血管性痴呆症で起こる、物忘れやうつ・自発性の低下・意欲の低下には「釣藤散」(ちょうとうさん)。

不隠や興奮状態には「抑肝散」(よくかんさん)、「三黄瀉心湯」(さんおうしゃしんとう)。

睡眠障害には「酸棗仁湯」(さんそうにんとう)「サフラン」。

虚弱で食欲のない人には「六君子湯」(りっくんしとう)、「四君子湯」(しくんしとう)、「人参湯」(にんじんとう)。

気力がなく、食欲がない人には「補中益気湯」(ほちゅうえっきとう)。

便秘には「潤腸湯」(じゅんちょうとう)、「麻子仁丸」(ましにんがん)。これは西洋薬の緩下剤との併用も良いようです。

腰痛・関節痛を伴う排尿時痛・排尿障害には「六味丸」(ろくみがん)、「八味地黄丸」(はちみじおうがん)。

腰痛を主体とする患者には「牛車腎気丸」(ごしゃじんきがん)。

高齢者に多い、冷えには「真武湯」(しんぶとう)、「人参湯」(にんじんとう)。

白内障には「八味地黄丸」、皮膚のかゆみに「当帰飲子」(とうきいんし)を用います。

高齢者は多くの病気を患っており、肉体的・経済的にも負担がかかっています。漢方療法を併用する事によって負担を軽減する事ができると考えます。