おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

 平成16年9月11日放送
がんの放射線治療
 
          宮崎県放射線医会 小野 誠治

放射線治療は、手術療法、化学療法(抗癌剤治療)とともに“がん治療の三本柱”の一本です。しかし、わが国では放射線治療を受けている方は、癌の患者さんの20〜25%(諸外国では約50%)です。まずは、放射線治療を正しく知っていただきたいと思っています。

1)放射線でどうしてがんが治るのですか?

癌は、自分の体の細胞の一部が無秩序に増え出し、自分に必要な栄養までも横取りし、ついには自分自身を死に追いやる病気です。したがって癌細胞は癌自身の子孫を増やすため大量の遺伝子の元であるDNAを増産しています。これに放射線が照射されると、DNAに傷がつき、まともな次の世代の癌細胞を作らせず死滅させるのです。

2)放射線治療はどんな目的で実施されるのですか?

放射線治療には根治的照射と姑息的照射の二つがあります。前者は放射線で根本的に癌を退治しようとするもの、後者は癌に伴う症状を軽減するためのものです。頭頸部癌(喉頭癌、咽頭癌、舌癌など)、食道癌、肺癌、子宮頸癌などでは、手術に優るとも劣らない成績を上げています。例えば、比較的初期(Stage I)の舌癌あるいは子宮頸癌の5年生存率は90%にも上り、手術による治療成績と変わりません。しかも、切り取らずに済むのです。また、癌が骨に転移した(骨転移)場合でも、これに放射線照射を行えば70〜80%の癌の患者さんの痛みは消失あるいは軽減するのです。

3)放射線治療は副作用が強いと聞いていますが…。

放射線治療は局所療法です。したがって照射した範囲以外には副作用は生じません。胸部に照射した時には食道炎が、腹部に照射した時には大腸炎や膀胱炎などが生じることはありますが、その程度も我慢できる範囲であり、頭部の脱毛などは頭部に照射しない限りは決して起こりません。

4)最近の放射線治療は昔と違うのですか?

とは言え、放射線は健康体にとっては決して良いものではありません。したがって、放射線治療はできるだけ正常な部分は避け、癌に絞って実施する工夫がされています。その代表的なものとして、ラジオサージェリー(定位手術的照射)や原体照射などが行われています。

5)県内でも放射線治療を受けられるのですか?

 人口の割には放射線治療ができる施設数は多く、宮崎大学医学部付属病院、宮崎、日南、延岡の県立病院。国立宮崎病院、都城病院、そして古賀総合病院と藤元病院と8施設もあります。

 癌の治療を受ける際に、主治医の先生に放射線治療についても一度お尋ねすることをお勧めいたします。