おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第9回 3月1日放送分
新医師臨床研修制度について
 
宮崎県医師会  常任理事 夏田 康則

 

  「研修医」は一般の方にもなじみのある言葉だと思いますが、来年の4月からこの制度が変わります。

 変更になる理由の一つは、現在の制度では専門医になるための研修が優先され日常出会う病気に接する機会が少なく、医師としての能力、性格の形成に偏りがあると指摘されているからです。このことが将来患者さんとうまくコミュニケーションがとれない、思いやりの気持ちに欠けるなど現在の医療不信を招く一因とも考えられています。

 もう一つは、研修の名のもとに低賃金、長時間労働が当たり前となっており、このためアルバイトで生計をたてることが多く十分な研修ができず、また健康を害して急死した例もあり社会問題にもなりました。

 新たな研修医制度では、2年間の義務制となり、内科、外科などの基礎的な科目を研修するとともに救急医療や小児科など現在の診療提供体制に不備のある診療科も研修させ将来のこの分野での医師の確保を目指しています。

 また、地域保健・医療では皆さんにも身近な診療所や福祉・介護施設などで研修を受けますので、日常的な疾患の診療能力を身につけながら最前線の医療現場で患者さんと親しく接する中で医師としてバランスのとれた人格形成の糸口がつかめるものと思います。

 また、現在財源的には確定していませんがアルバイトをせずに生活できる程度の手当は支給され、勤務時間、社会保険などの労働条件も考慮され研修に専念できる環境が整えられる予定です。

 本県では当初宮崎医科大学と県立宮崎病院が中心となって研修医を受け入れることが決まっていますが、将来は県内の多くの病院がこの制度に参加し県外からも出来るだけたくさんの向学心に燃えた研修医を受け入れ、この若い医師たちが将来の本県の医療を背負ってくれることを期待しています。

 今後皆さんの身近で研修医と接する機会があれば、立派な医師に育てるためにどうぞ遠慮なく声をかけ激励をしていただきたいと思います。