おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

 平成16年11月6日放送
混合診療とは
 
          宮崎県医師会 稲倉 正孝

日本の健康保険制度では、健康保険でみることができる診療の範囲を限定しています。混合診療とは、健康保険の範囲内の分は健康保険で賄い、範囲外の分を患者さん自身が全額支払うことを言います。

つまり、保険診療と自費診療の費用が混合するという意味です。

日本の健康保険制度では、「混合診療」は認められていません。

健康保険の範囲内の診療と範囲外の診療が同時に行われた場合でも、平等な医療を提供するために、範囲外の診療に関する費用を患者さんから徴収することを禁止しています。

もし、患者さんから健康保険で認められていない診療の費用を別途徴収した場合は、その疾病に関する一連の診療の費用は、初診に遡って「自由診療」として全額患者さんの負担となります。

 患者さんにとって、混合診療は一見有利なように見えますが、実はそうではないのです。混合診療には、次に述べるようにいくつかの重要な問題点が隠されています。

1)まず第1に、政府は財政難を理由に、保険の給付範囲を見直すようにしています。混合診療を認めると、有効性・安全性が確認された新しい診断法・治療法及び画期的新薬を「保険外」としたり、現在、健康保険でみている風邪などの軽費医療まで「保険外」とする可能性があります。給付範囲の縮小は国民皆保険制度の崩壊をきたします。

2)2番目は混合診療が導入されると、保険外の診療が増加し患者さんの負担が増えて、必要な医療が受けられなくなる可能性があるのです。公的保険の給付が制限されると民間保険への加入問題が生じ、国民負担は更に大きくなります。

3)3番目に、医療は、患者さんの健康や命という、人間にとって最も大切なものを扱うものです。お金のあるなしで、必要な医療が受けられなくなるようなことがあってはならないと考えています。

 以上のような理由で、日本医師会は「混合診療の容認」に断固反対します。

混合診療が導入されると、公的医療保険の守備範囲の縮小をきたし世界に誇れる日本の皆保険制度は崩壊するおそれがあります。

混合診療の問題を考えるとき「自分だけが満足したい」という発想ではなく、「社会としてどうあるべきか」という視点を持たなければなりません。全ての国民が公平・平等に安心で安全な医療を受けられる医療保険制度を構築することが大切と考えています。

 日本の医療政策に重大な影響を与える規制改革・民間解放推進会議は、混合診療を解禁し、一定水準以上の病院では、原則自由に保険診療と保険外診療を併用すべきと主張しています。小泉内閣は年内にも混合診療の全面解禁を決定しようとしています。

 混合診療が解禁されると、公的保険の守備範囲は狭くなり患者さんの負担は大きくなり、お金のあるなしで必要な医療を受けられなくなるおそれがあります。

 日本医師会は「混合診療の解禁」に反対し、国民と共に闘っていきます。国民の皆様のご協力、ご支援をお願いします。