気管支喘息の新しい治療「吸入ステロイド薬」

 

  喘息は世界的にも増加しています。 日本でも人口のおおよそ3〜4%とな っており、この20年間で3倍程に増 加したことになります。  また本邦では年間約5000人の方が 喘息発作で尊い命を落とされており、 この喘息死を減らし、無くすことが私 たち呼吸器内科専門医の究極の目標と なっています。  喘息発作は様々な刺激により気管支 の内腔が狭くなることで起こります。 気管支が狭くなれば呼吸困難が生じ、 狭い気管支を空気が通るときに笛が鳴 るような「ピューピュー」といった喘 鳴が聞こえます。  以前は色々な薬を使って、狭くなっ た気管支を拡げれば呼吸も楽になり気管支も元の正常の状態になると考えら れていました。しかし、最近の研究で 喘息の病態解明が進み、実は喘息発作 の主体は気管支が狭くなることより気 管支の粘膜やその壁の「炎症」が慢性 的に存在することが発作の引き金にな ることが解ってきました。  もう少し詳しく述べてみます。気管 支の粘膜のマスト細胞に、アレルギーを引き起こす物質が接触す ると、ヒスタミンやその他様々な化学 物質が放たれます。この結果気管支が 収縮して発作が起こるのですがそれだ けでなく、血管内から好酸球(白血球 の一種)が粘膜に入り込んで きて粘膜に炎症を起こし、粘膜がむく んできて気管支の内腔を更に狭くします。また傷ついた粘膜は非常に敏感に なっているため、ホコリや冷たい空気 などに反応して、すぐに発作を起こし てしまいます。  このことから解るように喘息の発作 は粘膜の炎症が下地にあるので、炎症 を治さない限り、発作は良くならず繰 り返すことになります。  この炎症を治療する抗炎症薬の代表 的なものが「吸入ステロイド薬」です。 この薬のメリットは喘息の本態である 気管支粘膜の炎症を抑える働きが格段 に強力なこと、すなわち喘息そのもの を良くする薬であること。気管支の局 所に使用するため経口薬や注射薬など の全身投与に比べ副作用の心配はほと んど無いといっても良いことです。  この吸入薬の適切な使用法の基準が 全国的に定着するにつれて、喘息悪化 による入院治療の減少、なによりも夜 間の発作が減り、喘息患者さんの生活 の質の向上が顕著に認められる様にな っています。  今後、この吸入ステロイド薬を用い た治療法が主流となっていくと思いま すが、副作用の防止や吸入方法に一工 夫が要ります。出来るだけ専門医の指 導の元に使用するようにして下さい。