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アトピービジネスの問題点 宮崎県皮膚科医会 アトピー性皮膚炎はアトピー素因を持った個体にアレルギー的要因(環境アレルゲ ンなど)と非アレルギー的要因(乾燥,発汗,掻破など)の環境要因とが作用してお こる持続性の湿疹病変です(図)。治療の基本はまず,生活環境の整備であり,そし て皮膚炎のコントロールです。どの疾患でもそうですが,画一的なものではなく,個 々の症例に応じたきめ細かな対応が必要となります。真の病因がいまだに不明なこと もあり,治療の本質は残念ながらcureではなく,careなのです。治療の目標は病気と 上手に付き合いながら,健常人と同じような生活が送れるようにすることです。将来 的には遺伝子治療が可能になるかもしれません。 このアトピー性皮膚炎について一番よく知っているのは何といっても1日数十名以 上の皮膚病の患者さんと10年,20年,30年とかかわりを持ち,勉強も続けてきた皮膚 科専門医です。そして,大多数の小児アトピー性皮膚炎は体力のアップした小学生時 代には治療を受けなくてよいほどに軽快していきます。 ところが,近年成人になっても治らないかなりひどいアトピー性皮膚炎がみられる ようになって,社会間題になってきました。原因はよくわかっていませんが,世間で 騷がれているほど多くはありません。 たしかに重症化した症例の一部には,アトピー性皮膚炎を根治しようとステロイド 外用剤(市販のものも含む)の間違った使い方のため,難治化,重症化したものもあ ります。そしてやがて,「ステロイド=恐るべき薬」ということと「アトピー性皮膚 炎=大変な病気」という誤った風潮が出来上がってしまいました。 この結果,医師へ の信頼が失われ,民間療法が取り沙汰されてきました。Cureできずにcareが必要な疾 患ではしばしば民間療法の入り込む間隙があります。慢性関節リウマチはその代表的 なものでしょう。 この民間療法を竹原は「アトピービジネス」と称して,“アトピー性皮膚炎患者を 対象として,医療保険診療以外の行為によってアトピー性皮膚炎の治療に関与し,営 利を追求する経済活動”と定義し,“医療機関および医師によって実践,後援されて いるものも含まれる”と付け加えています。具体的には,・既存の医療との共存をは かるもの(たとえば石鹸や防ダニグッズなど),・既存の医療を否定するもの(エス テティックサロンや健康食品,温泉療法など),・医療機関での非保険診療(SOD Superoxide Dismutase含有軟膏,SOD様食品,酸性水など),・医療機関を経営して 高額な化粧品等を売る,などがあります。 民間療法のうたい文句は・ステロイドを使わない,・アトピーの根を切る,・体質 を改善する,などです。まさに患者さんの弱みに付け込んだビジネスなのです。また これに関する本もたくさん書かれ,宣伝効果を高めるためか医学博士の肩書きを持っ た人がバックアップしています。持って生まれたアトピー体質を変えることはできま せん。ですから「根を切る」ことはできないのです。もちろん,転地や入院,転職な どで完治したように見えることはあります。先述したように,アトピー性皮膚炎は完 治する病気ではなく,生活環境を整えたり,ステロイド剤や保湿剤,そして抗アレル ギー剤などを上手に用いて,うまく付き合っていくべき病気です。ちなみに近々,免 疫抑制剤の外用剤が発売予定で,外用剤の選択肢がひとつ増えることになります。 無駄な時間とお金を注ぎ込んで民間療法に走り,不幸な人生を送る人がなくなるよ うに,皮膚科医がもっと住民やマスコミにアピールする必要があります。健康保険の みで十分な治療はできるのです。また,反省として,患者さんにもっと丁寧に説明す る必要があります。 |
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