|
更年期障害の最新情報
Yasuhiro Shimamoto
日本人の平均寿命の延びとともに女性にとって更年期以後を如何に過ごすか が重要になってきております。
現在女性の平均的な閉経年齢が50才前後と されています。平均寿命が85才である現代女性において約40%は閉経後です。
また同時に閉経を境として女性には大きな変化が生じてきます。 すなわち1骨の老化、 2血管の老化、3脳細胞の老化等が閉経とともに進行するとされます。
骨の老化すなわち骨内のカルシウムが減少し骨が脆くなり最終的にはいわゆる骨粗鬆症となります。このような状態になると高率に脊椎骨や大腿骨の骨折が起こり寝たきりとなります。骨内のカルシウムの減少と女性ホルモンであるエストロゲンの減少とが密接に関連しております。そのことからホルモン補充療法を行うことは骨量
の減少を抑制し、骨粗鬆症の発症を減少させます。その他カルシウム、カルシトニン、ビタミンDといった薬剤も骨量
の減少の抑制、骨量の維持に有用とされています。 しかしエストロゲンの内服は副作用も少なく薬剤費も安価で効果
も確実です。もちろん薬だけでなく日頃の運動も重要であることはいうまでもありません。
血管の老化に特に心臓を栄養する血管すなわち冠動脈の老化は心筋梗塞は死因となりうるものです。閉経前は女性は男性に比較し発症頻度が少ないですが閉経後は徐々に男女差はなくなてきます。エストロゲンは善玉
コレステロールであるHDL-コレステロールを増やしLDL-コレステロールを下げること、血管平滑筋を弛緩させること、一酸化窒素の産生を促し血管を弛緩させること等により心筋梗塞の発症を減少させると言われています。
脳細胞については、動物実験や疫学的研究で証明されつつあり、ある論文ではホルモン補充療法を行っているものはアルツハイマー病の発症が1年遅れるとのデータも見られます。
以上のようにエストロゲン補充療法は女性の老後にとって重要な寝たきり、心筋梗塞による突然死、痴呆といった問題に良好な効果
をもたらす薬剤です。 しかしデメリットもあります。1つは子宮がある患者さんにエストロゲンのみを投与すると子宮体癌の発症を増加させます。発症を予防させるにはエストロゲン投与に加えて黄体ホルモンであるプロゲステロンの併用を行えばむしろ発症を抑えるとされています。乳ガンについてもホルモン補充療法により発症率が1.2?1.4倍程度あげるというデータもありますし投与中は乳ガン検診を行うことは必須であると思います。
閉経後の女性の乳癌の発症による癌死のリスクに比較しても骨粗鬆症、動脈硬化、心筋梗塞による死亡の危険性は10倍程度高くホルモン補充療法は女性のQOL、寿命を延長させる可能性があります。
最後に本治療は現在何らかの疾患があってその病変の進展を防ぐまたは治癒させるものとは異なり、将来自分に降りかかってくるかもしれない疾患を防ぐためのものです。したがってなぜこの治療を行うかを十分理解して行わないと治療が長期に及び、治療を中断することになります。個人個人が主体的に治療の是非を選択し治療が必要であると判断した場合は、可能な限り長期間継続していただきたいと思います。
|