平成151119

宮崎県内科医会会員 各位

 

20回九州各県内科審査委員懇話会が1026日佐賀市で開催されました。各県から提出された協議事項のうち審査基準を議題とした事項を宮崎県の回答を中心に御紹介します。

すべての項目と日本臨床内科医会医療保険部会への宮崎県からの要望事項は内科医会誌に掲載致します。

 

宮崎県内科医会会  志多武彦

宮崎県内科医会医療保険委員会委員長  大西雄二

 

【1】   傷病名の記載を要するもの以外は、審査をしないの申し合わせが守られていますか。

(宮崎)(熊本)(沖縄) 

<提案要旨> 審査しないはずの低薬価薬剤が査定されることがあります。どのように対応しておられますか。

[回答] 過去に査定例がありましたが、現在は申し合わせ通りにしております。但し低薬価でも禁忌薬及び薬事法等で用量・期限がきまっているものは、それをオーバーすると査定されます。ある県では国保では長期投与は病名を必要とする。抗生剤は臨時的投与であっても病名を付す。但し、下剤、感冒薬、健胃剤、消化剤、眠剤は病名を必要としないとしています。H2ブロッカーと胃薬が併用され、低薬価の場合審査の対象となりませんが、胃炎の病名であれば、仮にガスター(20)2Tの場合低薬価ルールより容量が優先され、2Tが1Tに査定されます。病名がなければとおるという矛盾が生じます。

 

 

【2】胃・十二指腸消化性潰瘍に対しPPIまたはH2ブロッカーに加え粘膜保護剤の多剤(3〜4種類)投与について                                    (宮崎) 

<提案要旨> ヘリコバクターピロリ菌の概念より粘膜保護剤の有効性に疑問が持たれています。多剤投与の審査にお考えがありますか。

[回答] 従来は原則査定例はないようですが、今後は2剤程度が妥当と考えます。

請求通り認めている県がありますが、大筋はPPIまたはH2ブロッカーを含めて、3剤まで認める。但し、PPIH2ブロッカーの併用は認めない。出血など重症例は別である。

 

 

【3】リピトールなど「高脂血症」「高コレステロール血症」と適応病名が異なる場合の取り扱いについて                                         (福岡)

<提案要旨>「高脂血症」には適応があるが「高コレステロール血症」には適応がない。またその逆もある。医学的にはほとんど差がないと思われるが、審査委員によっては厳格に査定する場合もある。各県の状況は。

[回答] 高脂血症とは、一般的に血清脂質の異常増加(高コレステロール血症、高LDL−コレステロール血症、高トリグリセリド血症)を指していると理解されます。通常、高脂血症治療薬での高コレステロール血症の治療や高コレステロール血症治療薬による高脂血症の治療は上記からみて問題ないと考えます。

【4】消化性潰瘍(H2ブロッカー投与中)がある場合のニフラン、ロキソニン、ボルタレンの併用を認めているか。                                   (鹿児島)

<提案要旨> 社保ではいずれも認めているが、国保では抗NSAID剤の長期投与中の抗潰瘍剤として薬事法上認められているサイトテック使用中の患者以外は認めていない。

 [回答] 併用は認めています。消化性潰瘍があるからといって、鎮痛剤は投与せざるを得ない。患者の状態把握、注意・管理の下に医師の裁量権で投与可能ではないか。

他県では治療内容から急性期潰瘍の治療中であると想定される場合は査定もありうる。その期間は概ね3ヶ月としている。サイトテックはNSAIDによる潰瘍にしか認めていない。抗潰瘍薬との併用で18点をこえた場合は禁忌薬であり査定される。

 

 

【5】消炎鎮痛剤使用時に、佐薬あるいは胃炎防止の目的でセルベックスカプセル、マーズレンSの併用を認めているか。                                 (鹿児島)

<提案要旨> 本県ではいずれも認めている。

 [回答] 認めています。今回の胃潰瘍診療ガイドラインでは、NSAID胃潰瘍の予防に対しこれらの薬の効果は否定的であるが、今しばらく様子を見る必要があると考える。

適応病名なしに消炎鎮痛剤に併用できるのは薬効分類の健胃消化剤(SM散、健胃散など)だけであるとの扱いの県があります。

 

 

【6】C−peptide(CPR)の測定回数について                   (沖縄)

<提案要旨> 糖尿病患者において、CPRはインスリン分泌能の評価、インスリン投与中の患者の内因性インスリン分泌能の評価に有用であるとされている。測定値が、測定時間やその他患者の要因で左右され、1回の測定では不十分であり、医療機関によっては複数回の請求をしてくるところがあります。CPRの測定は尿中あるいは血中のどちらか一方を月1回としておりますが、貴県の取り扱い状況をご教示下さい。

[回答] CPRの測定は膵β細胞の内因性インスリン分泌能の評価に極めて有用な検査である。インスリン分泌は食事量や食事組成により日内変動、日差変動があるため、one pointの測定では正確な評価はできない。従って、血中CPR測定は一日2回(食前、食後)を認めている。尿中CPR測定は本来3日測定してその平均値をとるのがよいが、保険診療上は月2回を認めている。血中と尿中の異時測定は意義が異なるので、両者の測定を認めているが、概ね、3ヶ月に一回を限度としている。

月2回までは認めている。尿中は月2回、血中は月1回認めている。尿中と血中を同月に行うことは認められないの県あり。

 

 

7インフルエンザ感染症が疑われる症例で同一月に2回のインフルエンザウイルス抗原精密測定の算定は認めておられますか。                              (沖縄)

<提案要旨> 抗インフルエンザウイルス薬は、発症早期に使用すれば、有熱期間が短くて効果的であり、症状発現早期に医療機関を受診するケースが多くなっています。その際にウイルス抗原迅速診断法では、発症早期の為、初診時陰性で、翌日以降に症状持続し再来院した際のウイルス抗原迅速診断法で陽性例が経験されます。昨シーズンのインフルエンザはA型とB型の流行が一時期重なっていた為に同一月にA、B型両方に感染する事例もみられました。それらのような事例において、2回のインフルエンザウイルス抗原精密測定の算定は認めておられますでしょうか。社保においては、現在、審査委員間での統一した取り決めはありません。各審査委員の医学的判断により認める事例もあります。但し、国保は1回のみを認めています。 

[回答] 同一月に2回感染したと判断される場合には、認めています。1回の感染では検査は1回ですので、1回目と2回目の検査の間には相当の期間が必要です。

原則1回。ただし、提案要旨のような事例もあるので2回までは認めます。1週間以内の測定であれば、特に2回の測定を必要とした注記がなければ、一連として1回分の算定としている。1週間以上の間隔があれば2回の算定を認めているなどの県あり。

 

 

8フローボリュームカーブ検査の負荷前、負荷後の両検査の請求について       (福岡) 

<提案要旨> 気管支喘息等の呼吸器疾患において、負荷前、負荷後の両検査がルーチンに行われている施設がある。どの様に対処しておられるか知りたい。

 [回答] 事例がないが、仮にそのような請求がある場合は、担当規則どおりの算定とする。ルーチン検査としては不必要で返戻、注意、D査定になる。気管支喘息の自己管理にはピークフローメーターを使用することが多く、喘息指導管理料を算定できる。したがってルーチンにフローボリュームカーブ検査を行うことは認めていない。

 

 

9同一日、異なる診療科の異なる医師による異なる部位に対する超音波検査は認められるか。各県の実情を伺いたい。                                (鹿児島)

<提案要旨> 本県国保では認めているが、社保では同一の方法で、実日数1日では1回のみ認めている。他県の実情についてお伺いしたい。

 [回答] 異なる部位の時のみ検討する。胸腹部、頚部、四肢、体表、末梢血管等は同一の方法での検査なので1回しか認めていない。しかし部位が頭部、胸腹部、心臓となると方法、機種、専門性が異なるので認めることも考えられる。

同一の方法では、実日数1日で1回のみ認める県と、それぞれの専門医のいる施設では認めるとの県あり。

 

10パルスドップラー検査を心疾患(含む冠血流量、血栓)以外に認めているか。各県の実情を伺いたい。                                      (鹿児島)

<提案要旨> 本県ではパルスドップラー加算は社保では心疾患以外にも精索捻転症、ナットクラッカー症候群(腎よりの大量出血)等にも認めることが合意されたが、国保では原則として認めてない。他県の実情を伺いたい。

 [回答] 腫瘍性疾患には認めています。さらに甲状腺疾患では機能亢進症に認めています。腫瘍血管に富む悪性腫瘍(肝癌・腎癌)の診断及び治療後の局所再発所見としての血流信号の有無の評価にドップラー検査は有用である。ドップラーに関するコメントが併記され、この内容により適否を行っている(コメントがない場合は不可)。

 

11生活習慣病の指導管理料を算定している患者における情報提供料の算定について (宮崎)

<提案要旨>情報提供料は指導管理料に含まれ算定できないとの解釈のようであるが、どう思われますか。 

 [回答] 情報提供料は指導管理料に含まれるので認められず、不合理と考えるがやむをえないの回答がほとんどです。

 

 

12血液透析動静脈瘻(シャント)血流不全時の処置である「経皮的動脈拡張術(PTA)」の保険審査について                                      (長崎)

<提案要旨> シャント処置はバルーンカテーテルを拡張目的で使用するので「四肢血管拡張術(15,800点)」の適応と考えられる。しかし、14年2月より社保の審査では「血管結紮術(その他のもの)」として、3,130点へ減点されている。根拠は血栓除去を目的としたフォガティーカテーテルを使用した「内シャント血栓除去術(3,130点)」に準じていることのようです。しかし、目的も使用するカテーテルも異なり、血管造影も行っており納得できないとの意見があります。再三の再審請求にも明確な理由が明示されません。貴県ではいかがでしょうか。

[回答]「内シャント血栓除去術」に準じて3,130点としております。

内シャント血栓除去術として請求するように決定している。国保中央会へ照会し、厚労省からの回答を得ている。

【質問】人工腎臓患者におけるシャント狭窄の症例で、血管内手術用カテーテル(PTAパルーンカテーテル)等の保険医療材料を用いて血管拡張・血栓除去を実施した場合の手技料は、どれで算定するのでしょうか。

【回答】K602血管結紮術2その他のもの3,130点で算定する。ただし、ステントセット等を用いて四肢の血管拡張・血栓除去を行った場合は、K613四肢の血管拡張術・血栓除去術15,800点で算定する。

 

 

13C型慢性肝炎に対するIFN投与について                     (佐賀)

<提案要旨> C型慢性肝炎の治癒には、HCV-RNAの長期陰性化が必要で、そのためのIFN投与期間はおよそ2年間とも言われています。当県では、HCV-RNAが陰性化すればIFNの投与は中止するように指導されています。2点につき各県のご意見をお聞かせ下さい。(1)HCV-RNA陰性化後のIFN投与を認めておられるかどうか。(2)認めておられる場合、その後の投与期間はどのくらいでしょうか。

[回答](1)インターフェロン治療は投与期間の制限が撤廃されましたので、認められます。(2)症例毎に主治医の判断に委ねる。

鹿児島県では再投与は1回に限り6ヶ月以内(標準投与期間)(1)A・有効以上の効果のあったもの投与終了後6ヶ月以内GOT,GPT正常値上限の2倍以下に下がった。若しくは、その後6ヶ月以上正常値上限の2倍以下を持続した例。B・投与終了時点でHCV-RNA陰性化、又はGPTが正常化したもの。(2)HCVのセロタイプが1以外、或いはジェノタイプが1b型以外であること。又は、HCV-RNA量がプローブ法で1Meq/ml以下、或いはアンプリコア法で100Kcopies/ml以下であること。県下の肝臓専門病院では、再投与例もみられます。