令和5年2月号 平和について(平穏無事)
短期間で終わるとの目論見が外れてロシアによるウクライナ侵攻が長期化し,国際情勢も絡んで複雑化しています。専門家の想定すらも二転三転しているように,現代戦争の推移には定型的なパターンはないようです。極論は世界大戦に発展すると危惧する専門家もいます。惨憺たる街並みや施設のニュースを見て普段は考えたこともない平和なわが国の有難さを再認識しました。現地では明日どころか数分先をも知れない環境におかれた人々の心境はいかがなものでしょうか。イギリスの詩人であるロバート・ブラウニングは「すべて世は事もなし」と,十八史略では「鼓腹撃壌」とあるように,古来より身近に感じられない政治が最良の治世であると述べており,平和で平凡な日常生活の有難さは洋の東西を問わず同じと思われます。と言っても政治に無関心ではあらぬ方向に向かうし,行き過ぎたポピュリズムにも問題があります。
わが国は先の敗戦後,米国の庇護下での平和が続いています。これは独立国家としては特異な形かもしれません。それでも治安がよく安全な国と言われ,私を含めて戦争を知らない世代が国民の大半を占め平和ボケとも揶揄されています。しかし,近隣には話し合いや常識が通用しない国々があり,常識外れの行動に対する我国の方針は抗議のみです。昨年10月に北朝鮮のミサイルが日本の上空を超えたようですが,もし国土に飛来すれば訓練を受けていない私たちはいかなる行動を取るべきかを知りません。国際社会に訴えて調停がなされてもそれまでに失われた命は戻りませんし,これを最小限の被害として片づけられてはかないません。最終的には国民にしわ寄せが来ますので,指導者の選択は重要です。
また,3年にわたるコロナ災禍でも社会が混乱しました。さまざまな意見や対策が講じられましたが,経済との兼ね合いもあり効果は満足できるものではありません。その他多くの自然災害が猛威を振るい,被害が生じては対策を行うということが繰り返されています。想定される事態に予防策を取るべきところを,議論や評論ばかりでは被害の防止はできません。戦争も一種の災害と見做して平和を維持するためには備えが必要です。わが国では戦争のない世界を理想として長年議論が重ねられてきました。これは素晴らしい理念です。しかし,議論や抗議のみでは効果は疑問です。全世界的な協議の場としての国連も声明を出すのみで効果は限定的で,その声明すらも満場一致とはならないようです。
ウクライナ侵攻のニュースを見て平和について考えさせられました。
令和5年2月号