平成26年11月

宮崎県医師会長 河野 雅行

               医政について
             


 医師の目的は国民の健康・生命を守ることである。言い換えれば地域医療を守ることである。しかし,医師の目的が高尚であろうとも,現代社会においては医療のみ孤高では通らない。密接に社会・政治・経済とリンクしている。良い医療には良い医療政策がなければならない。過去には医療のみに専念すれば,後は自然に何とか良い結果につながる夢のような時代もあった。今は,その様な理想状態は望むべくもない。現代の社会では発信力も重要である。しかし,我々医師が声を挙げると多他方面から圧力団体等々の批判を受ける。実際は,医師会の主張は県民・患者さんを代弁しているのであり,エゴでもよくばり村の村長さんの弁でもない。したがって,何と揶揄されようともその信念の元,更に,主張し続けなければならない。
 最近,国の施策の基本的な姿勢として,地方創生,地方自治が強調されるようになり,特に,福祉・医療は,きめ細かい,地域に合った施行を目的として,国から地方自治体に移管されようとしている。介護は既に市町村が主体となっており,その手法で医療も県単位に収斂されようとしている。
 日医では早くから医政の重要性に注目し,様々な対策を講じてきた。日医の医療政策の基本として「地域医療を支える」「将来の医療を考える」「組織を強くする」の3項目を挙げている。また,日医が国の政治を判断する基準としては,「国民の安全な医療に資する政策か」「公的医療保険による国民皆保険は堅持できる政策か」の2項目を挙げている。更に本年の代議員会で日医綱領を決定,それらの実現に邁進することになった。
 県医でも,今後は我々自身で,県や市町村と積極的に協議を行い,地域に合った医療体制を構築する必要が生じている。国の提唱する地方創生は「地域でそうせい」も含んでいるのである。そこで,地方選挙が重要な意味合いを持ってくる。この12月には,宮崎県知事選挙が,来春には統一地方選挙も予定されている。
 国民の生命・健康を守るのは,国の最重要使命である。分に過ぎた要求はともかく,この文明社会において生命・健康以上に重要なものは何があろうか?当然,財政的な見地からのみで健康を論じるべきではない。しかも,我が国は充分な力を有するのである。巷間言われるように,空気と同じ様に安全・安心は「ただ」ではない。歴史は多量の血を流した結果にようやく得られた安全・安心も多数あることを示している。同様に生命・健康を守るのも生半可な取組みでは得難いものである。政治のさじ加減で左右されてはならない。とは言っても,現実は為政者の方針で決まる。医政はその時々の政治家・政権の質によって翻弄されてきた。トップの考え方が少し変わる(振れる)だけで末端の振幅は大きなものとなる。本当の政治家は誰なのかを見極めないと,結局は自分達で後始末をする羽目になるし,我々を含めた患者さん達までもが不幸にならざるを得ない。そこで,我々,地域医療に携わる者としても医政が重要になる。
 勿論,国政レベルでの医療政策動向から目を逸らすことはできないが,医療行政が地方に移管されつつある今,地方の政治が地域医療に密接に関連してくる。今まで以上に地方政治に関心を示し関与すべきである。会員諸先生方におかれても,ご協力をお願いする次第である。
                                     (平成26年10月24日)
                                      


バックナンバー