平成26年12月

宮崎県医師会長 河野 雅行

         医療介護総合確保推進法について
             


 各方面で頻繁に話題となっており,当会としても日州医事11月号に池井常任理事が述べているが,今後の我国医療の転換点ともなる案件であり再度上載したい。
 我が国の人口は2010年の1億2,800万人をピークに減少傾向にある。一方65歳以上の高齢者は全人口の25%超を占めており,更に増加傾向にある。中でも団塊の世代と言われる年代が2025年に75歳に達する。所謂2025年問題と言われる。現在でも統計に拠れば75歳以上の一人当たり医療費が若年者の4倍に達し,全医療費の36%を占めている。公的医療保険を存続し,限られた医療費の中で全国民に平等・公平に宛がおうとすれば現状のままでは無理がある。そこで,医療供給体制の見直しと,医療費の再配分が計られることになり,「医療介護総合確保推進法」が本年6月に制定された。新たな財政支援制度,医療事故に係る調査の仕組み,看護師の特定行為の明確化,地域包括ケアシステムの構築,人材確保の方策等,19もの法案が成立した。中でも一つの核を成すのが,「病床機能報告制度と地域医療構想(ビジョン)」である。それは地域(二次医療圏を想定)毎に現在の病床機能報告により医療資源を調査して,適正な供給体制を考慮し,更に将来を予測して計画を立て,地域に合った構想を作るのが主眼である。入院の在り方を是正するのに病床カウント等は既になされており,一定の規制が掛っているし,治療の濃淡を付けるために設備や看護師数等により,診療報酬に差を付けるなど様々な手法が取られてきた。しかし,ある程度の効果は表れたものの,その度に様々な問題点が指摘されてきた。
 今回改定の目的は,その内訳をより鮮明にしてきめ細かい提供体制を再構築することにある。この法律により,一本の川に例えるならば,川上の医療と川下の介護が密接に繋がり,かつ将来のあるべき姿が示された。介護保険創設当時から「医療と介護は車の両輪」と言われていたが,私的には「医療と介護は一体」であるべきと考える。同一人間に対して,医療と介護を財政的な思惑で切り離すことは不可能である。今回制定された法律を機に,我が国の医療・介護は大きく変革するものと思われる。我々,医療に携わる者も対応を誤らない様にしなければならない。当に正念場である。
 報告制度は既に開始され,ビジョンの策定も近日中に迫っており,時間的余裕はそれ程ない。このビジョンの作成にあたって,県は医師会の意見を聞くことと明文化されており,我々も積極的に対応・関与する必要がある。先生方のご協力をお願いします。
 この法律の内容は膨大かつ重大であり,今後の地域医療の転換点ともなるので,その他の項目の幾つかについては,機会が得られれば更に述べてみたい。                                  
                                    (平成26年11月25日)
                                      


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