平成27年6月

宮崎県医師会長 河野 雅行

              厚生局指導について
             


 
我々,保険医は医業を行うにあたり,医師法,医療関連法(療養担当規則等)以外にも,医科点数表(いわゆる青本)に縛られている。保険医・保険医療機関に認定されると,医師・医療機関は支払基金や国保連合会等と診療契約を交わしたと見なされ,保険診療は契約診療であることを認識する必要がある。当然ながら青本は国(保険者)と医療機関との間に交わされたいわゆる合意書,ルールブックであって,医学書とは異なる。したがって,医学的には摩訶不思議な項目も多々見受けられる。学会で認定された最新の治療を行っても,契約内容からの逸脱や,請求漏れがあれば審査会で査定される。定められた内容に従い診療,書式により記録,手順で請求することが義務付けられる。努力した治療の結果が認められないと,仕事の意欲も減退してしまう。青本の内容は膨大で年々増えており,しかも頻繁に改定がなされている。全部を読み込むのは大変な作業ではあっても,ルールから外れるとペナルティが待ち構えている。日医で青本の簡略化を訴えているにもかかわらず,厚労省としては青本内容解釈を巡っての論争も多く,詳述する必要から内容は膨大なものにならざるを得ない。加えて,新規収載もあり今後も肥大化していくのはやむを得ないとの見解である。青本を全て理解するのは至難であるのを承知であえて言わせていただくと,青本や療養担当規則を十分理解されて診療を行っていただきたい。先述した様に青本は順守すべき我々のルールブックである。認知不足は理由として認められないのでご注意を。
 診療内容の他に,施設基準・人員配置等々の様々な観点から厚生局の指導がなされる。これは,法律で定められている事柄であり,指導指定されると拒否はできない。県内でも年間数十か所の医療機関が指導の対象になる。個別指導対象には一応の選定基準が設けられてはいるものの,具体的な決定方法については明らかにされていない。いくつか明らかなのは,高点数と再指導,患者・保険者・職員等々・様々な方面からの情報提供がある。情報提供がされると,当局(厚生局)は動かざるを得ない。指導の際には県医師会から担当役員が立会をしている。その度毎に指摘される内容はほぼ類似の項目が多く,中でもカルテや書類の記載不備が頻繁に指摘されている。現代医療は,証拠を残すための書類が必要とされている。それも,膨大な量で現場は大変であるが,書類の不備は指導・査定の対象となりやすい。個別指導では,内容によっては指導・査定され,大きな誤りは監査の対象ともなり得る。監査の結果,重大なミスや,保険医・医療機関として相応しくないと判断されれば,保険医取り消しまで含めた厳しい処分がなされる場合もある。残念ながら宮崎県でも数年ごとにこのような事例が発生している。立会役員も,解釈の違い等に止まらず,規約外や法的誤りがあればいかんともしがたい。種々の規約を順守して診療に取り組んでいただきたい。青本・規約通りに診療をされていれば指導対象指定を受けても臆することはありません。毅然として臨んでください。   
                                       (平成27年5月21日)

                                      


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