おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第57回 平成16年1月31日放送
腰曲がり予防について
 
宮崎県整形外科医会  押川 紘一郎

 

 この番組をお聞きのAさんから次の様なお手紙を頂きました。

 「38歳の主婦です。私の母親が腰が痛いと訴え、徐々に曲がってきました。おばあちゃんも腰が曲がっています。私も将来曲がってしまうのでしょうか。腰曲がりを予防する方法と母の腰の痛みを改善する方法をおしえて下さい。」

 このご質問の腰曲がりの大きな原因として骨粗鬆症が考えられます。骨粗鬆症は更年期を迎えた閉経後の女性に多く見られます。女性ホルモンの分泌が減少することで骨の吸収と形成のバランスが保たれなくなるためです。骨がもろくなることで体重を支える骨の梁がまばらになり、少しの力で骨折したり椎体の形が変わり、曲がってくるのです。残念ながらこの骨粗鬆症は遺伝的素因が大きく、Aさんの家系的には骨粗鬆症の可能性が認められます。しかしながら食事や運動など環境的な因子も大きな影響を与えていることが判ってきましたので、がっかりすることはありません。

 40歳を過ぎてからでも食事や運動を注意することで骨粗鬆症を予防することが可能です。最近では、腰痛のため食事とトイレ以外は殆ど横になっていた81歳のおばあちゃんが、週5回トレーニングジムに通い、8か月後には手押し車や杖で一人で外出できるようになり、身長も1.5センチ伸び、つまずかないで歩けるようになったという、楽しい報告もあります。Aさんのお母さんもおばあちゃんも、今からでも遅く無いのです。週に3日から5日、一回15分以上、可能なら50分程度無理のないジョギングや早歩きと、5分から10分程度のストレッチ体操を続けてみて下さい。できれば前腕中心のぶら下がり運動や壁押し、腕のねじり合いなどを加えると効果が増します。

 決して無理をしないように、快適な体調時に楽しみながら運動を持続すれば、遺伝的な素因を変えたり、年をとって体力の減少を止めることは不可能でも骨粗鬆症の体質の発現を止めることは可能なのです。さっそく運動を始めましょう。