おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第17回 4月26日放送分 
前立腺癌検診について
 
宮崎県医師会 理事  池井義彦

 

 前立腺癌とは、欧米諸国に多い癌で、特に米国では男性の癌の発生率で第1位を占めています。日本での発生はその1/5 程度ですが、生活習慣の欧米化とともに急激に増加しています。年齢的には、一般的に60歳台をさかいに急速に発生頻度が高くなっており、加齢とともに増加しています。

 初期の前立腺がんはほとんど無症状です。癌がある程度進行しないと症状は現れてきません。このため癌を早く発見するには、癌検診を受けることが必要です。

 検診では問診・血液検査・診察を行います。血液検査では、PSA(前立腺特異抗原)を調べます。このPSAは、一部の前立腺肥大症でも軽度上昇しますが、信頼性の高い腫瘍マーカーです。診察では、直腸診により前立腺の大きさ、硬さ、結節の有無などを診ます。そして、PSAの値と直腸診の結果を参考にして診断します。

 PSAの正常値は4ng/ml以下で、直腸診にて異常がなければ毎年1回の検診で経過観察されてよいと思われます。PSAが10ng/ml以上の場合は精密検査が必要となります。PSAが4.1から10ng/ml以下の場合、グレーゾーンとして他の所見とあわせて精密検査を行うか、経過観察とするかを決めます。

 前立腺癌の治療法は、初期であれば、手術でも薬による治療でもほぼ完全に克服することが可能です。しかし、進行していると治療が困難となることがあります。前立腺癌は、適切な治療を受ければ、ほかの癌に比べ、かなりの効果が期待できます。

 まとめ

・ 前立腺癌は今後もっと増加する癌であること

・ 早期に発見されれば、きわめて完全治癒が得られる可能性が高いこと

・ PSAというきわめて簡便で精度の高い検査が存在すること

 上記の理由から、50歳以上の男性のPSA検診を受けられることが望ましいと考えます。