おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第24回 平成15年6月14日放送送
頸(くび)の痛み
 
宮崎県整形外科医会 平川俊一

 

  頸の痛みを訴えられる方は、外傷を除けば腰痛、膝痛に次ぐ頻度であると推定されます。有症状者が増えている原因として、運動を盛んに行う高齢者の増加、子供におけるゲーム等の不良姿勢やパソコンの作業で一定の姿勢を長時間強制されるなどの日常生活の様式の変化が考えられます。

 頚椎部は脳を収容する頭蓋を支える支柱の役目をしていると共に、目、耳といった情報収集器官をその方向へ向けるために自由に動かさなければなりません。このように相反する事である支持性と可動性を求められています。さらに脳から出た神経、脊髄神経の通路であり、また上肢へ出ていく神経根の分岐部ともなっています。このように解剖学的に重要な役割を負っています。

 頸の痛みという訴えは、後頭部、肩甲部、上肢への疼痛またはシビレ感、場合によっては上肢、下肢の麻痺を種々合併することが多いために病像が複雑です。しかしながら神経学的所見と単純レ線からかなりの確率で、正確な診断を下すことが可能であり、更にMRI等の検査にて病態を正確に把握することができるようになりました。

 治療に関しては、他の疼痛性疾患と同様に消炎鎮痛剤、筋弛緩剤等の服用、いわゆる理学療法、頚椎カラーの使用による頚部の安静などの併用が主たる治療手段となり、ほとんどの方がこういった保存的治療で症状の軽快、軽減が得られます。手足のシビレ感や神経麻痺が進行する場合に手術的治療が余儀なくされますが、症状を出している責任部位や病態により選択される術式は異なります。現在では前方除圧固定術、頚部脊柱管拡大術など適応を選べば比較的安全で成績の安定した術式が完成されたと言えます。手術をする適切な時期があるのであまり進行しないうちに経験ある専門医と相談されることが望まれます。