おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第3回 1月18日放送分
がん検診
 
宮崎県医師会 常任理事 稲倉正孝

 

 平成13年度の厚生労働省の人口動態統計によると、がんによる死亡者が昨年初めて30万人を突破しました。がんによる死亡者の死亡総数に対する割合は31.0%で、3人に1人はがんで亡くなられたことになります。

 人口の高齢化、環境汚染、食品の発がん物質による汚染、食生活の変化などによって、がんに罹患される方およびがんで亡くなられる方は増え続けると考えられています。

 臓器別によるがん死亡数は、男と女を合わせた全がんでは肺がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、膵臓がんの順になっています。

 男女別にみますと、男では肺がん、胃がん、肝臓がん、大腸がん、膵臓がん、の順になっています。

 女では胃がん、大腸がん、肺がん、肝臓がん、乳がんの順になっています。

 がん検診の実施には、多くの保健・医療資源を必要とすることを考えれば、がん検診については、有用性について科学的な評価が必要なことは明らかです。

 1)対象疾患の罹患率、有病率、死亡率が高いこと

 2)スクリーニング検査の妥当性と信頼性が高いこと

 3)検査が簡単で費用が適正であること

 4)早期発見後の早期治療効果が明らかであること

等の条件が考慮されるべきです。

 平成10年3月に、久道 茂東北大学教授を班長とする「がん検診の有効性評価に関する研究班」の結論が公表されています。胃がん、子宮がん、乳がん、肺がん、大腸がんの5つのがん検診の有効性が認められています。これら5つのがん検診を合わせると、延べ2,300万人の方が受診されています。

 がん検診の目的は、がんを早期に発見して治療することにより、がんを治癒させることを目的としています。がんは早期に発見して、早期に治療するほど治療成績がよいわけです。

 がんの治療技術の進歩によって、がんは早期に発見されるほど、手術浸襲が少なくて、術後の回復が早く、生活の質もよいわけです。

 この様な理由で、年1回のがん検診をおすすめします。