おしえて!ドクター健康耳寄り相談室

第31回 平成15年8月2日放送 
甲状腺の病気
 
宮崎県内科医会 長倉穂積

 

 甲状腺の病気は珍しいと思われがちですが、実際には頻度の高い病気で、病気の種類もいろいろあります。しかし、いずれの病気もごく稀な場合を除き甲状腺に腫れを生じ、また成人女性に多いという特徴があります。

 甲状腺は首の前面の下方、のどぼとけの下にありますが、正常では触っても分かりません。甲状腺の働きは、甲状腺ホルモンを作り血液中に分泌します。このホルモンには体の新陳代謝を盛んにする作用があり、人間の活動を活発にします。また、子供では成長を促す作用もあり、このように甲状腺は体にとって大変重要な役目を持っています。

 実際に頻度の高い甲状腺の病気としては、バセドウ病、橋本病と甲状腺の腫瘍の3つがあります。バセドウ病は、甲状腺機能亢進症つまり甲状腺ホルモンが高くなる病気の代表です。有名な症状に眼球突出がありますが、新陳代謝が高まりすぎるため、疲労感・動悸・発汗・手の震え・食べても痩せる等の症状がみられます。次に橋本病は、別名慢性甲状腺炎とも言います。この病気の約4割の患者さんに甲状腺機能低下症を生じます。代謝が低下するため、皮膚がカサカサする・むくみ・無気力・物忘れ・便秘等がみられます。最後に甲状腺の腫瘍については、良性と悪性のものがあります。この鑑別は極めて重要ですが、日本人では甲状腺の悪性腫瘍は乳頭癌というタイプが圧倒的に多く、このタイプは手術すれば治る確率が非常に高く、体の癌の中でも最もたちの良い癌の1つと言えます。

 では、これらの病気を早く見つけるためには、まず首の前面にある甲状腺に腫れがないか気をつけることが重要です。次にホルモンに異常があると多彩な症状を呈しますので、前述した症状のある方(特に成人女性)は、一度検査を受けるのが良いと思います。

 甲状腺の病気は正しく診断・治療をされれば重篤な状態になることは稀です。過剰な心配はせず、早期発見・治療に努めましょう。