令和5年11月号 外国人患者

 最近,外国人の受診が増えています。アジア系の人々が多く,当県では製造業や建設業,農・林業関係の実習生や労働者が多いようです。外国人の診察には多くの課題があり,最も大きいのは言葉の壁です。一口にアジア系と言ってもそれぞれ言語が異なり,共通語はありません。中には日本語が堪能な人もいる一方,母国語しか話せない人もいます。しかも,最近は人出不足のためか通訳を帯同せずに事業所から単独で突然受診される人もいます。私も片言の外国語交じりの変な日本語を駆使してなんとか主訴は理解できても病歴や細かい症状まで理解するのはなかなか困難です。更に,検査や診察の結果,治療方針等々を説明するには大いなる労力と時間を要します。
 そのような状況に悩まされている中,便利なグッズを見つけました。安価で小さな翻訳機です。少し時間はかかりますが,英語は勿論,中国,フィリピン,ベトナム,タイ等々多くの言語に対応できます。ただし手持ちの簡単な器具では長い構文の会話には対応できません。短い会話で伝えればほぼ完全に通訳できます(と思います)。使用し始めてからは診療の緊張感が少し緩み,外国人に対してそれほどの苦手意識は感じなくなりました。
 なお,日医の医賠責保険に付帯されている医療通訳サービスというものがあります。年間20回まで無料で利用できる電話通訳とスマートフォンアプリで利用できる機械翻訳です。本会が来年2月に行う「外国人患者対応に関する研修会」の中で通信機器を用いたデモンストレーションなどを予定しておりますので,外国人患者対応に不安がある先生はぜひご参加ください。
 国のデータによると観光客を除く外国人の日本国内居住者は195か国から307万人(2022年人口の2%,宮崎県人口の約3倍)になります。これだけ多くの人々が暮らしているのであれば,街で見かけるのもそれほど珍しいことではありません。今後は短期就業の人たちも含めて安心して居住可能な環境作りにも取り組むべきです。
 法律的には日本国籍を持つ人を日本人としていますが,純日本人の定義は難しく,ある人によれば日常的に日本語を使用することが第一条件だそうです。その面からも日本居住の外国人にはまず日本語をしっかり勉強してもらう必要があります。日本人は歴史的にも遥か昔にさまざまな地域から人々が移住し次第に融和して今の形になったと解説されています。伝説では日本原住民としてコロボックルなる人たちがいたそうです。その後,北方や南方ルート,朝鮮半島経由などで新しい知識や技術を持って渡来して定住したようです。現代はどこの国からでも港や空港を通して簡単に来日できます。こうした人々が日本に定着して,未来から返り見れば多人種の混血により新しい日本人が作られてゆく過程なのかもしれません。今までも可能であったように自然に融和してゆくのではないでしょうか。それが人口減少の歯止めにつながる期待も持てます。最近増えた外国人を診察しての感想です。

令和5年11月号